「韓国人のこと嫌いになりそう」。韓国通で知られる女優黒田福美さんが、電話の向こうでため息をついた。
黒田さんは17年前、「日本人の名前で死んだのが残念だ」と話す朝鮮人特攻隊員の夢を見た。青年を慰霊しようと故郷を探し出す。石碑を制作し、地元市長が提供してくれた公園内に建てたが、除幕式直前に反対運動が起こり、式は中止になった。3日後には市が石碑を撤去してしまった。反対運動をした市民団体は「日本のために死んだ人はたたえられない」「皇民化教育の犠牲者ではあるが、加害者でもある」と主張していた。
黒田さんの「日韓の和解につながる平和の礎(いしじ)にしたい」との一念で奔走した行動力に感服し、記事にしたが、歴史問題の難しさを思い知らされた。電話で聞いた黒田さんのひと言が耳に残る。「多くの韓国人が反対しているとは思いたくない」 (築山英司)
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