世界主力戦車トップ10(米Armor99年7-8月号より)
ランキング |
名前 |
生産国 |
1 | ドイツ | |
2 | アメリカ | |
3 | 日本 | |
4 | フランス | |
5 | イギリス | |
6 | ロシア | |
7 | 韓国 | |
8 | ロシア | |
9 | ロシア | |
10 | イスラエル |
世界最高の戦車は何だろうか?アメリカ合衆国の戦車乗り達は認めたがらないだろうが、世界の戦車ランキングを依頼されたForecast International社はドイツ製のレオパルド2最新型がM1A2を上回る世界最高の戦車であるとの結論を出した。
・レオパルド2A6(ドイツ)
『実戦配備中では最新型のレオパルドA5は大きく改良されており、以前と同様に引き続き世界をリードしている。』と報告は結論づけた。近年行われた競争入札の結果スイス陸軍に納入されたバージョンのレオパルド2はドイツ軍のものよりも優れているとも付記している。これはスイス陸軍に納入されたレオパルドにはより発達した最新式の指揮統制システムとGalix車輌防御システムが搭載されているからである。またレオパルド2Sもまた新しい反応装甲システムを搭載している。『ドイツ陸軍の採用したバージョンのレオパルド2はより長口径の砲身と新型装薬を採用されている』(A6と呼ばれる)レオパルドシリーズの他にも高い評価を受けている特徴としては、MB873ディーゼルエンジンや、信頼性の高い砲塔装甲、油圧変調による誤発砲(hydraulic fluid fire)を防ぎ、素早い砲操作を可能にする新しい電動式の砲制御・安定システムがある。新型火力制御システムはレオパルドの戦闘能力を保証しており、レオパルド2の「ハンターキラー」能力(目標撃破能力)をより高めている。ただし、この報告には、M1A2に対するレオパルド2の優位性は年ごとに縮まってきており、M1の戦車砲の信頼性の向上により、両者は今非常にちかい位置にあると付記されている。
・M1A2 (アメリカ)
戦車長に専用の赤外線暗視装置を追加し、目標を伝達する能力(hand-off capability)を向上させたことにより、エイブラムス戦車は「ハンターキラー能力」(目標撃破能力)においてレオパルド2と同等の戦車になった。
他のすべての戦車と異なり、最新型のエイブラムスは車輌間情報システム『IVIS』( Inter-Vehicular Information System)を搭載している。IVISは、報告にあるように、『事実上他の戦車に欠けている、特筆に値する情報伝達能力をM1A1に与えている。この能力により、M1A2はレオパルド2をしのいでいる』のである。エイブラムスはガスタービンエンジンを採用することで世界をリードしている。ガスタービンエンジンにはその利点・欠点について議論がある。報告書にも、ガスタービンエンジンを採用する国はほとんどないとしている。というのもガスタービンエンジンはディーゼルエンジンに対して燃費が悪いからである。『M1のエンジンの能力は疑問の余地のないものではある。しかし、多くの国は、ガスタービンエンジンを搭載したエイブラムスの補給支援体制を構築することができないのである。』これと同様の理由で、トルコ陸軍はMTU社製のディーゼルエンジンを搭載したM1を採用しようとしている。
M1に対する新しい改修案により、火力統制と指揮統制システムと他の電子技術の信頼性が向上し、『電子技術の面でレオパルド2よりもわずかに進んだ地位を保持しうる』と報告は述べている。
また、最新の兵器開発に詳しいあるアメリカ軍士官によると、アメリカはドイツの長砲身の戦車砲に注目するが、ドイツは劣化ウラン弾を採用しておらず、そのためにアメリカと同等の破壊力を得ようとして長砲身の戦車砲を採用したのだろう、とのことだ。
報告では、エイブラムスが高い順位にあるのはその破壊力が主要な原因であることが強調されている。この破壊力がクエートを解放する闘いにおいてアメリカ軍に優位性を与えたのである。M1A2はランキングされた中で最も良い乗務員防御を誇っている。 IVIS システムもその情報伝達能力のために良い評価をえる原因となった。
・90式戦車(日本)
第三位は、驚くべき事に、今まで戦車技術では知られることのなかった国の戦車である。日本の90式戦車(三菱重工製)は外見はレオパルド2ににており、ラインメタル社の開発した120mm砲と自動装填装置を搭載し、乗員三名を実現している。日本政府も三菱重工も90式戦車に関する情報はあまり公開していないため、90式戦車は『謎の戦車』になっている。しかし報告書によれば、90式戦車は『全くもって近代的で洗練されており、射撃統制システムはレオパルド2A5やM1A2よりも進んでいる。そして、車輌の電子技術はそのすじで高名なフランスのルクレール戦車や、レオパルド2A5やM1A2よりも先進的である』としている。『そしてこの射撃統制ソフトと先進的な電子技術が90式戦車を世界水準の戦車としているのである』90式戦車には世界に名高い日本のエレクトリクス技術の優秀性がフル活用されている。いくつかの細かい点で今だ謎の部分はあるが、砲撃統制ソフトは自動目標追尾能力と、これは長年噂されていたのだが、ある種の目標認識・判別・敵の脅威度を判別する能力が組み込まれていると思われる。『90式戦車は1500馬力の三菱製ディーゼルエンジンを搭載しており、このエンジンは他の世界水準の戦車に類似した出力重量比(パワーウェイトレシオ)を実現している。90式戦車は50tであり、西ヨーロッパの闘いを想定して設計された戦車よりも装甲が薄い。また乗員室が狭いと思われる。『以上の点をすべて考慮すると、90式戦車は今日の世界で最高の戦車の一つであると結論づけられる。』
・ルクレルク (フランス)
90式戦車に僅差で4位になったのはフランス軍のMBT、ルクレルクである。ルクレルクはドイツ製ディーゼルエンジンを搭載しており、またイギリスのチャレンジャー2戦車をおしのけ、アラブ首長国連邦の戦車入札競争に勝ち抜いた。ルクレルクの特徴は、その先進的な電子技術にある。データバスを搭載しており、先進的な火力統制システムを搭載しているのである。120mm戦車砲は自動装填装置機能があり、乗員3名化を実現している。そして140mm戦車砲も開発中であり、輸出用にデモンストレーションが行われたこともある。砲塔は全自動式である。また興味深いことには、モジューラー式装甲を採用しており、敵の戦闘力に会わせて装甲を調整できる特徴がある。
・チャレンジャー2(イギリス)
チャレンジャー2の車体と新しいギアボックスはチャレンジャー1に近い。しかし砲塔は大幅に拡大された結果、チャレンジャー2は新戦車と呼ぶにふさわしくなった。報告書によれば、『チャレンジャー2は戦闘力のあらゆる面で能力が不足している。これは砲塔のデザインが貧弱であるのと火力統制システムになんらかの問題をかかえているためである。この二つの問題はチャレンジャー2の新砲塔でも解決されていない』新たに設計されたデータバス、新しいエレクトロニクス、火力統制システムはM1やルクレルク戦車に近い。装甲は第二世代チョバムアーマーを採用している。これはイギリスが独自に開発した多層型装甲システムである。チャレンジャー2の高圧力戦車砲はライフル化されており、総ての弾薬は、砲塔回転基部より下にストックされている。報告書によると、チャレンジャーの戦車砲は湾岸戦争に於いて4000m以上の距離で砲撃しており、最も長距離を射撃できる戦車砲であるとされている。
・T80UM2(ロシア)
ロシアは新しいガスタービンエンジン技術を戦車に導入した。T80UM2のエンジンはヘリコプターのエンジンを改修したものであり、初期型のエンジンより信頼性が向上している。このエンジンは初期のT80Uとは『良い意味で非常に異なっており、当戦車ランキングでのT80UM2の順位を決定する時にあらゆる面でその根拠となった。』と報告書にはある。新型砲塔はその角張った形状がM1戦車やチャレンジャー2の砲塔に似ている。この砲塔は砲塔バスル内に自動装填装置を装備しており、初期のロシア製戦車に搭載されていたような、砲塔の床部分に設置されていた回転式装填装置よりは安全性の高いものになっている。
またT80UM2の自動装填装置には自動信管セット機能がある。使用する砲弾は単体のもので、推進剤と弾頭を分離装填する方法はとっていない。T80UM2にはロシアが開発に先鞭をつけていた、主砲から発射できる対戦車誘導ミサイルを装備できると推定されている。火力統制システムは改良されており、近代的な西側の主力戦車のレベルにちかづきつつある。主砲の自動装填装置付125mm滑空砲は初期のものよりもより早いレートで砲弾をうちだすことが可能になっている。またロシアは大変奇抜な発想による防御システムを開発している。これは爆発式反応装甲(Kaktusシステム)とアレナ(Arena)アクティブディフェンスシステムを含んだもので、他にもロシアが世界でリードしている技術が含まれている。T80戦車の欠点をあげれば、最近のチェチェン紛争でみられたように、製造工程と製品管理にみられる信頼性の低さであろう。公平な観点からみて軽装備といえる敵兵の持つ武器に対しても脆弱であるように思われ、一線級の他の戦車と比較するとその性能には疑問符がつく。
・K1A1(韓国)
88式戦車(別名K1戦車)はM1戦車を開発したのと同じチームによって設計された。88式戦車の外観は『小型版M1戦車』('Baby M1')のように見受けられる。近年、88式戦車は製造メーカーの現代(ヒュンダイ)により、世界標準であるM256 120mm砲への換装がなされ、火力統制システムも『M1戦車と同等ないしそれ以上なものに改良された』とされている。88式戦車はディーゼルエンジンを搭載している。
88式/120型『小型版M1』戦車は主砲を105mm砲から120mm砲に換装したものである。
・T90(ロシア)
T90はロシアの新しい主力戦車であり、その車体はT72を基に設計されているが、『全く違っており新しい型番を付与するにふさわしい』と報告書は述べている。T72と同様にディーゼルエンジンを搭載しており、Kontakt爆発式反応装甲システムとレーザー式警戒装置と一体化したシトーラ1(Shitora-1)対抗システムで防御されている。シトーラ1は誘導ミサイルを欺瞞するための装置である。125mm戦車砲はRefleksレーザー誘導ミサイルを発射することっも可能である。その生存性と製造時の生産管理体制には疑問がある。報告書によると、砲塔は狭く、戦闘能力を減少させている。また、ウクライナ製のT84が様々な点でT90に類似している、とされている。
・T72(ロシア)
1960年代に設計されたため設計自体が古く『改良の余地はほとんどない』と報告書は結論づけている。しかし、コストが低いため、兵器の競争入札においては相対的に有利である。125mm主砲の自動装填装置は回転装填式であり、生存性に欠点を持っている。
・メルカバMK3(イスラエル)
メルカバの設計は世界の戦車開発の主流からはずれており、トップ10の中でも最下位にあるのはその貧弱な出力重量比が原因である。しかし、120mm戦車砲や、先進的な車輌のエレクトロニクス、火力統制システム、敵警戒システム、そして車体前方に搭載するエンジンがもたらす世界でも最高級の防御力が高く評価されている。報告書ではメルカバは多くの点で調査した他の戦車とはくらべることができないとしている。というのもメルカバは『イスラエルのユニークなドクトリンやイスラエルにとっての必然性をいろこく反映しているためである。そのような国にとっては、メルカバは最高のバランスをもった設計』といえるが、そのような状況は他の地域では認められないのである。
原文:Armor誌99年7-8月号
#Armor誌は1888年に創刊されたフォートノックスにあるアメリカ陸軍機甲部隊長官(Chief of Armor at Fort Knox)が発行者の職業軍人向けの雑誌です。訳は可能な限り原文に即しました。
リンク:http://140.153.247.2/center/ocoa/ArmorMag/