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5 月 23 日 (金)  
5/23(金)20:00更新
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後期高齢者医療 廃止法案提出
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民主党、共産党、社民党、国民新党の野党4党は、75歳以上を対象にした後期高齢者医療制度を廃止するための法案を23日、野党が多数を占める参議院に提出しました。
野党4党は23日午後、幹事長・書記局長会談を開き、後期高齢者医療制度について「高齢者を差別する制度だ」として、これを廃止するための法案を正式に取りまとめたあと、野党が多数を占める参議院に提出しました。
法案では、後期高齢者医療制度を来年4月から廃止し、その後はこれまでの老人保健制度に戻すとしており、これにより年金からの保険料の天引きや、サラリーマンなどの扶養家族になっていたお年寄りの保険料負担がなくなることになります。
また、法案では制度が廃止されるまでの間の措置として、年金からの保険料の天引きを遅くともことし10月には停止することや、75歳以上で新たに保険料の負担が生じる人に対する保険料徴収の凍結期間をさらに半年間延ばすことなどが盛り込まれています。
このあと民主党の鳩山幹事長は記者会見し、後期高齢者医療制度について「お年寄りを差別するとんでもない制度だ。参議院で再来週まで議論し、可決して、衆議院に送りたい」と述べました。
また、鳩山氏は、野党内に廃止法案をめぐる政府・与党側の対応によっては、福田総理大臣に対する問責決議案を参議院に提出すべきだという意見があることについて、「党としての態度は決めていないが、参議院での採決で与党が反対すれば、その際に提出することもタイミングとして考えられる。また、その後の衆議院での議論も見極めたうえで提出することも考え方の1つだ」と述べました。
高齢者医療 審議の中で理解を
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福田総理大臣は、自民党の伊吹幹事長と会談し、野党4党が参議院に提出した後期高齢者医療制度を廃止する法案について「この制度がなければ最終的に高齢者自身が困ることを審議の中でわかってもらわなければならない」と述べ、法案審議の中で制度への理解を求めていく考えを示しました。
この中で、伊吹幹事長は、後期高齢者医療制度を廃止する法案について「野党側の無責任さを明らかにするチャンスだ。野党側は老人保健制度に戻せと主張しているが、それは現役世代に青天井で負担を求めるということだ」と述べました。
これに対し、福田総理大臣は「この制度がなければ、最終的に高齢者自身が困ることを審議の中でわかってもらわなければならない」と述べ、法案審議の中で制度への理解を求めていく考えを示しました。
また、伊吹氏は、国家公務員制度改革基本法案をめぐる与野党の修正協議について「与野党の間でいったん合意できたとしても、労働基本権の取り扱いなどをめぐって、民主党内から異論が噴出する可能性がある」と述べ、法案の取り扱いは民主党内の状況を慎重に見極めて判断する必要があるという考えを伝えました。
舛添厚生労働大臣は、国会内で記者団に対し、「これまでの制度に問題があったから、10年来の議論をして、1つの解決策として出したのが今回の制度だ。いちばん大事なことは、廃止したあとにどういう制度にするのかであり、何らかの代替策を出してもらわないといけない」と述べました。
そのうえで、舛添大臣は「政府・与党としても、制度の根幹は変えないまでも、国民から批判されている点についてはいろいろと見直し、今の制度を改善していくという姿勢は保ちたい」と述べました。
与党 高齢者医療軽減策を検討
75歳以上を対象とした後期高齢者医療制度をめぐって、23日、自民・公明両党の実務者が会合を開き、所得が低い高齢者の負担軽減策などの検討を急ぎ、遅くとも来月初旬までには具体案を取りまとめる方針を確認しました。
23日の会合には、自民党の丹羽前総務会長や公明党の坂口元厚生労働大臣らが出席し、後期高齢者医療制度の運用の改善策について協議しました。
この中では、所得が低い人の保険料負担を軽減するため、最大で保険料の7割を免除するとなっている現在の制度を変更し、8割や9割を免除する措置を新たに設けることや、年金からの保険料天引きを一部見直し、保険料を個別に徴収する対象となる人を拡大するため、基準となる年金の月額を1万5000円未満から6万6000円程度に引き上げることなどをめぐって意見が交わされたものとみられます。
そして、野党4党が、後期高齢者医療制度を廃止するための法案を参議院に提出したことも踏まえ、遅くとも来月初旬までには具体案を取りまとめる方針を確認しました。
一方、自民党は、高齢者を支援する総合的な政策を検討する合同部会の初会合を開き、出席者から「自民党が高齢者対策に力を入れていることを積極的に広報すべきだ」とか「相続税を納める人の数を増やすなど、税制を見直して社会保障の財源を確保すべきだ」といった意見が出され、今後、精力的に議論を進めることになりました。
終盤国会 最大の焦点に
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民主党など野党4党が、国会の会期末まであと3週間となったこの時期に後期高齢者医療制度を廃止するための法案を提出したのは、この制度に対する国民の不満や不信感を背景に、福田内閣を追いつめたいというねらいがあります。
野党側は、政府・与党側に制度を存続させるかどうかを迫り、世論の動向を見ながら、福田総理大臣に対する問責決議案を提出するかどうか判断することにしています。
一方、政府・与党側は廃止法案の提出について、「無責任な対応だ」と批判を強めており、与党の幹部は「逆に野党側の問題点を明らかにする絶好の機会だ」としています。
ただ、与党内にもこの制度を見直すべきだという意見もあり、自民、公明両党は、所得が低い高齢者の負担軽減策などの検討を進めています。
また、民主党も、制度の廃止を求めるだけでは責任政党として不適格だとして、制度を廃止したあとの新たな医療制度のあり方を検討する方針です。
このように、この廃止法案の取り扱いが終盤国会の最大の焦点となりそうで、国民の関心の高いこの問題をめぐる与野党の論戦は激しさを増す見通しです。
※このニュースは5月23日20時00分時点でのものです。
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