子どもの頃の夢…
誰でもそうだと思うが、僕はいつも
『あんなことがしたいなぁ』『こんなことがしたいなぁ』
と何かしら夢見ていることがある。
今は『豪華な海の上のコテージで毎日海の幸を食べながら
リラックス三昧で1か月過ごした上に予算は5万円』
というほとんど実現不可能な夢を抱いている。
ここまでいくと“夢”ではなく、ただの“願望”である。
実家の母親は栄養士の資格を持つ上に料理好きだったために、
スナック菓子やアイスクリーム、菓子パンといった類の食べ物に
恵まれなかった僕は、小さい頃に夢見ていたことがあった。
『毎食スナック菓子と菓子パンを食べ、おやつはアイスクリーム』
という栄養バランスもへったくれもない食生活を送ることだ。
で、大学生になり、アルバイトで初給料の2万円を手にした僕は、
《そうだ、子どもの頃の夢を今こそ叶えるのだ!!》
と、力コブシを握り締め、嬉々としてお菓子屋に向かった。
あんパン・クリームパン・チョコクリームパン・カレーパン・
チョコドーナツパン・クロワッサン・焼そばパン・ジャムパン…と
ありとあらゆるパンを買った上に、アイスクリーム数個を手に
《夢が叶うというのはこういうことなんだな》
と何ともいえない充実感にひたっていた。
今でもそうなのだが、僕は空腹時にスーパーへ行くと
買い物意欲が通常の7〜8倍に増幅されてしまうため、
勢い任せに商品を買いまくり、カゴを一杯にしてしまうことがある。
この時もそんな状況だったと記憶している。
そして家に帰った僕は、菓子パンの袋を開けて皿の上にパンを並べ、
両手にパンを握り締め、片っ端からパンを食べていった。
空腹だったこともあり、最初のうちは夢中で菓子パン頬張り
《うーむ、幸せ》
と思っていたのだが、案の定、4個目を過ぎたあたりから
《うーむ、ゲップ》
という状態に陥り、5個目の半分を頬張る頃には
《うーむ、何でこんなことをしてるのか…》
と自問自答を繰り返すようになっていた。
はっきり言って口の中が甘ったるいやら油っぽいやら、
菓子パン特有の香料臭いやらでキモチ悪くなっちゃったのである。
こうして僕の小さい頃の夢はキモチ悪さとともに達成され、
翌日には胃もたれのおまけまでついてしまった。
この話を学生時代の友人のTに話したところ、
「何だ、安っぽい夢だなぁ。俺の夢はもっとビックだぜ。
俺は会社に入ったら、初月給でスジスジのメロンを買って食べるんだ」
と、Tは誇らしげに僕に向かって言った。
「“スジスジ”のメロン」??
と、僕が聞き返すと、
「スベスベのメロンの進化したのが、
あのスジスジの入ったメロンだろうが。そんなことも知らんのか」
と、Tはこともなげに言った。
彼は小さい頃から母子家庭で育ち、高校・大学と奨学金を貰いながら
勉学に勤しむ苦労人だったが、勉強も抜群に出来、人当たりもよかった。
そんな彼の唯一といっていい盲点が、生活常識の不足であった。
居酒屋では『〆さば(シメさば)』を『アルファー(α)さば』と読み、
ロス疑惑の『三浦和義(みうらかずよし)氏』を
サッカーの『三浦知良(みうらかずよし)選手』だと信じ、
「サッカー選手
があんなことしちゃぁ駄目だよ」
と本気で言っていたこともあった。
ちなみに彼の言う
“スベスベのメロン”は“プリンスメロン”、
“スジスジのメロン”は“マスクメロン”のことである。
苦労しながらも優秀な成績で大学を卒業したTは
そのバイタリティーが高く評価されて、一流の商社に入社を決めた。
羨ましいことその会社には都心の一等地に豪華な独身寮があった。
間取りは1LDKで室内は白が貴重の贅沢なつくりで、
床は全面フローリングとバブル時代の空気を存分に残していた。
先日Tに電話で聞いたところによると、
彼はその部屋で学生時代に語っていた夢を実現させたらしい。
「初月給を銀行で下ろした足で八百屋に行って、『一番いいメロン』
って言ったら『夏にならないと入らない』って言うんだ。
だからわざわざ銀座まで行って1個5千円のメロンを3つ買った」
「で、食ったのか?」
「おう。寮の部屋で スーツ着たまま一人で全部食ったよ」
「どうだった?」
「いやぁ、ゴージャスな気分だったぜ。
何たってスジスジのメロンだったから味が違うんだよ」
ちょっと想像してもらいたい。
一流企業の独身寮でいい男がスーツを着たままで
両手に“スジスジのメロン”を持ちながら嬉々としている様子を…。
30歳を過ぎて“マスクメロン”を“スジスジのメロン”
と言い続けているTは、はやくも課長に昇進し同期では一番出世だそうだ。
『あんなことがしたいなぁ』『こんなことがしたいなぁ』
と何かしら夢見ていることがある。
今は『豪華な海の上のコテージで毎日海の幸を食べながら
リラックス三昧で1か月過ごした上に予算は5万円』
というほとんど実現不可能な夢を抱いている。
ここまでいくと“夢”ではなく、ただの“願望”である。
実家の母親は栄養士の資格を持つ上に料理好きだったために、
スナック菓子やアイスクリーム、菓子パンといった類の食べ物に
恵まれなかった僕は、小さい頃に夢見ていたことがあった。
『毎食スナック菓子と菓子パンを食べ、おやつはアイスクリーム』
という栄養バランスもへったくれもない食生活を送ることだ。
で、大学生になり、アルバイトで初給料の2万円を手にした僕は、
《そうだ、子どもの頃の夢を今こそ叶えるのだ!!》
と、力コブシを握り締め、嬉々としてお菓子屋に向かった。
あんパン・クリームパン・チョコクリームパン・カレーパン・
チョコドーナツパン・クロワッサン・焼そばパン・ジャムパン…と
ありとあらゆるパンを買った上に、アイスクリーム数個を手に
《夢が叶うというのはこういうことなんだな》
と何ともいえない充実感にひたっていた。
今でもそうなのだが、僕は空腹時にスーパーへ行くと
買い物意欲が通常の7〜8倍に増幅されてしまうため、
勢い任せに商品を買いまくり、カゴを一杯にしてしまうことがある。
この時もそんな状況だったと記憶している。
そして家に帰った僕は、菓子パンの袋を開けて皿の上にパンを並べ、
両手にパンを握り締め、片っ端からパンを食べていった。
空腹だったこともあり、最初のうちは夢中で菓子パン頬張り
《うーむ、幸せ》
と思っていたのだが、案の定、4個目を過ぎたあたりから
《うーむ、ゲップ》
という状態に陥り、5個目の半分を頬張る頃には
《うーむ、何でこんなことをしてるのか…》
と自問自答を繰り返すようになっていた。
はっきり言って口の中が甘ったるいやら油っぽいやら、
菓子パン特有の香料臭いやらでキモチ悪くなっちゃったのである。
こうして僕の小さい頃の夢はキモチ悪さとともに達成され、
翌日には胃もたれのおまけまでついてしまった。
この話を学生時代の友人のTに話したところ、
「何だ、安っぽい夢だなぁ。俺の夢はもっとビックだぜ。
俺は会社に入ったら、初月給でスジスジのメロンを買って食べるんだ」
と、Tは誇らしげに僕に向かって言った。
「“スジスジ”のメロン」??
と、僕が聞き返すと、
「スベスベのメロンの進化したのが、
あのスジスジの入ったメロンだろうが。そんなことも知らんのか」
と、Tはこともなげに言った。
彼は小さい頃から母子家庭で育ち、高校・大学と奨学金を貰いながら
勉学に勤しむ苦労人だったが、勉強も抜群に出来、人当たりもよかった。
そんな彼の唯一といっていい盲点が、生活常識の不足であった。
居酒屋では『〆さば(シメさば)』を『アルファー(α)さば』と読み、
ロス疑惑の『三浦和義(みうらかずよし)氏』を
サッカーの『三浦知良(みうらかずよし)選手』だと信じ、
「サッカー選手
があんなことしちゃぁ駄目だよ」
と本気で言っていたこともあった。
ちなみに彼の言う
“スベスベのメロン”は“プリンスメロン”、
“スジスジのメロン”は“マスクメロン”のことである。
苦労しながらも優秀な成績で大学を卒業したTは
そのバイタリティーが高く評価されて、一流の商社に入社を決めた。
羨ましいことその会社には都心の一等地に豪華な独身寮があった。
間取りは1LDKで室内は白が貴重の贅沢なつくりで、
床は全面フローリングとバブル時代の空気を存分に残していた。
先日Tに電話で聞いたところによると、
彼はその部屋で学生時代に語っていた夢を実現させたらしい。
「初月給を銀行で下ろした足で八百屋に行って、『一番いいメロン』
って言ったら『夏にならないと入らない』って言うんだ。
だからわざわざ銀座まで行って1個5千円のメロンを3つ買った」
「で、食ったのか?」
「おう。寮の部屋で スーツ着たまま一人で全部食ったよ」
「どうだった?」
「いやぁ、ゴージャスな気分だったぜ。
何たってスジスジのメロンだったから味が違うんだよ」
ちょっと想像してもらいたい。
一流企業の独身寮でいい男がスーツを着たままで
両手に“スジスジのメロン”を持ちながら嬉々としている様子を…。
30歳を過ぎて“マスクメロン”を“スジスジのメロン”
と言い続けているTは、はやくも課長に昇進し同期では一番出世だそうだ。
2002.07.15 | | コメント[0] | トラックバック[0]