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数理の授業

アルプスの少女ハイジのブランコを覚えていますか?オープニングの歌に合わせて主人公のハイジが元気一杯にブランコをこぐあのシーンです。雄大なアルプスの山々を背景に、とても気持ちがよさそうですね。

大学時代、このブランコに異を唱える数理の先生がいました。以下はその主張。

「皆さんね、ハイジっていうのは皆さんが思っている以上に凄い女の子なんですよ。アニメの画面で測定したんですがね、ブランコが前方で一瞬停止してから後方で止まるまで、6秒もかかっている。10歳の日本人の女の子の平均体重は37kg。大柄のヨーロッパ人であることを考えて、ハイジの体重は40kg前後。仮にロープの重さを13kgとしてですね、端に40kgのオモリをつけた振り子の周期を、画面上の6秒×2=12秒に合わせて計算すると、ハイジのブランコの長さは27mとなります。皆さん、ハイジはロープの長さが27mもあるブランコを自在にあやつるんです。ただ者ではありませんよ」

その計算をするあなたがただ者ではない。

「振り子というのはですね、長ければ長いほど落差も大きいんです。当たり前ですね。最も低い地点では相当のスピードが出るはずだ。 画面を静止させて測ってみたら、最も高く上がった地点で垂直方向からの角度は70度もありました。テレビの画面に張り付いて計っていたら、妻が私を変な目で見て困りましたよ、ハハハ」

誰でも変な目で見ると思います。

「それでですね、ブランコの長さと角度から計算しますと、あのブランコの落差は18mもありました。高さ18mは建物でいうと7階位の高さですね。最高速度は時速70kmに達します。時速70kmっていったらあなた、首都高速の制限速度ですから車並の速度が出ている計算です。7階から時速70kmで落下した上に、シートベルトもしないで、腰掛けている狭い横板とロープを握る両手だけで身体を支えているんです。私なら目が点になりますね」

こんな計算をするあなたに目が点です。

「さらに画面をよく見るとですね、足もとのはるか下界を教会の尖塔が行ったり来たりしているんです。遠近法を加味して計算すると、どうやら100mぐらい上空で遊んでいるようなんですね。ということは、ハイジは100mの高さにある時速70kmのブランコで天真爛漫に笑っているんです。恐るべき精神力です」

そこまで突っ込むあなたも恐るべき精神力です。

「そして問題はブランコの設置場所です。歌に『♪教えてー、アルムのモミの木よ〜』という一節があります。ハイジの生活圏内に、有名なモミの大木があるらしいんですよ。ハイジのブランコの木は教会の上空100mに先ほどのロープの長さ27mを足した、最低でも127mの高さにあるモミの横枝を使っていると思われます。おそらく世界一の大木なんでしょう」

おそらく世界一のユニークな授業です。

「ブランコに乗りたくなると、ハイジはこの世界最大級の巨木にアタックをかけるわけですね。そして巨木をスルスルと127m垂直登攀して、その後ブランコを支えるロープ伝いに27m降りる。続いて全身を躍動させ、最大時速70kmのスピードを満喫するんです。降りる時ですか?もちろん同じルートをたどって降りるしかないでしょう。地上100mの高さのブランコですから、飛び降りたら大変なことになりますよ。歌に『♪教えて〜おじいさん〜』という一節がありますが、どうしたらこんな凄い子どもを育てられるのか、教えて欲しいですね」

数理って奥が深いなぁ、と感じた大学時代の授業の一コマです。

2007.12.29 | コメント[0]トラックバック[0]

気が遠くなってきた

前にも登場した旧大蔵省へ人事交流に行っていたA君の話。
「とにかく幾ら予算を取ってきたかがその官僚の評価を決めるわけ。予算の元手が国民の血税だとか、そんな意識はあんまり無いんじゃないかなぁ」
だから防衛省のあのお方は出世できたのか、と妙にナットク。

でもって、来年度の財務省の原案が出てきたので規模を1千万分の一にして家計に当てはめてみたら気が遠くなってきた。(若干の誤差はカンベンして下さい)

「お家の収入:575万円」

サブプライムとか政情不安とか不安定な中で、お父さんは来年も頑張って働きます。来年度の給料(税収)は、前年並の535万円です。月44万5000円の計算です。この他に株の配当やお母さんパート代など(特別会計の繰り入れ・日銀納付金など)で、年間40万円が入り、年間では2万円の収入が増える予定(は未定)です。景気も下向きで、残念ながら来年度も劇的に収入が増える見込みはなさそうです。

「お家の支出:825万円」

その一方で、生活費(一般歳出)は470万円。年金保険料や医療費(社会保障関係費)、子供の教育費(文教・科学振興費)が年々増え続けています。家の増改築費や庭の手入れ(公共事業関係費)を少し削ったものの、生活費を減らすことは出来ませんでした。

実家の両親への仕送り(地方交付税等)は毎月5000円ずつ上乗せして年間155万円にしました。家や車のローンの返済に年間200万円必要です。金利が下がったので年間8万円位減りますが、焼け石に水のようです。

「借金:250万円」

支出は(生活費・仕送り・ローン返済)は年間825万円。収入は575万円ですから、250万円の借金(新規国債発行)をしなければなりません。あれれ…年間の借金の返済は200万円だから、返す以上の借金をしないと生活できないんですね。借金を借金で返すのって「自転車操業」って言うんじゃないんですか?景気刺激策をとっているならまだしも、財政再建中でしたよね!?

「今までの借金:5530万円」

それだけではありません。忘れちゃいけないのが今までの借金(国債残高)です。今までのツケがあるんですね。来年度末の借金の合計(国債残高)は1年前より65万円多い5530万円。家の年収の10倍です。借金の利息(利払費)だけで年間90万円かかります。

「日本の借金:一人1600万円」

額を戻して、いま日本の抱えている借金の合計は770兆円(税収は年約50兆円)になります。赤ちゃんからお年寄りまでを含めた国民一人当たり1600万円にのぼります。

また気が遠くなってきた。

※「借金時計」で検索してみて下さい。財部誠一さんのサイトで刻々と変わる「日本の借金」の額が分かります。気が遠くなるのでたまにしか見ていませんが…。

2007.12.22 | コメント[0]トラックバック[0]

英語から学んだこと

「英語」というものを初めて本気で学んだのは大学受験の時。その面白さを初めて知ったのは大学の時。「英語」から学ぶことって結構多いように思ったものだ。

「英語に『未来形』は無い」

英語を学び始めた時に教えられる『未来形』。その代表は「will」。「I will go shopping(買い物にいくつもりだ)」これからのことを示すから単純に『未来形』だと思っていた。しかし大学の先生がこう話していた。「『will』は未来ではなく現在の主体の意志。未来を作るのは、今の環境や条件ではない。現在の意志が未来を作っていくのだ」だから「will」は意志を持った強い現在形だという。

「make a difference(×違いを作る)」

「違いを作る」という訳は間違い。正確な和訳が難しいフレーズだが、英語の世界では「他との違いがある」=「重要」となる。英語圏ではいかに個性を出すか、違いを作るかが「重要」となる。一方、日本では他の人と違っていたり異質なところがあると、その人を排除する傾向がある。また、組織の基準に合わない人や考え方、スタイルを極力排除する傾向にある。従う側も違うことに劣等感を持ち、自分から異質なものを消して妥協する。

「make a difference」は、そんな日本的な考え方とは対極を為す、英語圏では「重要」な考え方である。別の言語を学ぶと言うことは、その言語の背後に広がる文化や思想を学ぶと同時に、自国の文化や思想を比較しながら見つめることにつながる。

「understand(理解する)」

分解すると「under(下に)」+「stand(立つ)」。人間は「下に立って」初めて物事を「理解する」ということ。底辺に立つと、仰ぎ見る角度は広く大きくなる。視野が広がり、多くのものが目に入る。上から見下ろし、わかった気になることを理解とは言わない。自分は今、困難のさなかにいる、弱く、低い立場にいる時こそ、物事を真に理解できる時と言える。「親が子供を見る以上に子供は親を見ている」と言われる。様々な組織も同じなのではなかろうか。「understand」とは、その立場に立って初めて「理解する」ことが出来るものと言える。

「have an influence(影響を与える)」

「give」ではなく「have」。 影響は「与える」ものではなく、その人が内に「持っている」もの。権威や肩書きではなく、その人が内に「持っている」ものが、真に影響を「与える」ものなのだと言う。心の底から尊敬したい、一生付き合っていきたい、そんな思いにさせてくれる人は、内に光るものを「持っている」。何かを「give」するのではなく、何かを「have」している人なのだという。一生の友たり得る者同士は、お互いに何らかの影響を「持っている」ものなのだ。社会人になると利害関係だけの繋がりというものが多くなるが、その逆の関係を象徴しているようだ。

「I've been to UK(英国に行ったことがある)」

これは「現在完了進行形」。英国に行った経験が、今現在何らかの形で生きていることを表す。人生はすべからく「現在完了進行形」である、というのが英語の考え方。一瞬一瞬の積み重ねが現在を作り上げているという。日本語だけではこういう発想はなかなか出来ないだろう。英語で表現されて初めて気付く考え方と言える。

***

しかし、家のローンの返済を積み重ねてもなかなか減らない。平成50年って一体いつなんだ、そりゃ。世の中「現在進行」してもなかなか「完了」しないものもあるようだ。

2007.12.15 | コメント[0]トラックバック[0]

アメリカンな感じ

温暖化防止!ということで世の中「エコ」が錦の御旗のようになっている。先進国が率先して温室効果ガスの削減をしましょう、と呼びかけた京都議定書に「しゃらくせぇ!オイラにはオイラのやり方があるんでぇ」(当時のN.Y Timesを思いっきり意訳)と切って捨てたアメリカが、ここ数年やる気になっている。とってもアメリカンな感じで。

「バイオエタノール」

温暖化防止と原油高騰の対策に頭を痛めていたアメリカ。そこで原油への依存からの脱却を目指そうとブッシュ大統領が切り札として持ち出してきたのが『バイオエタノール』。『バイオエタノール』は大豆やトウモロコシなどの穀類を原料にして、複雑な蒸留過程を経て油分だけを抽出して可燃性のある燃料に精製される。原料が光合成によって二酸化炭素を吸収した植物だから、それを燃やして二酸化炭素を排出しても±0という“カーボンオフセット”理論はアメリカが提唱したものだ。

『バイオエタノール』人気が加熱し、原料の一つであるトウモロコシの相場は10年ぶりの高値まで上昇した。農家はこぞってトウモロコシに転作。商社はトウモロコシの確保に血眼になった。これに金融機関が目をつけないはずが無い。モルガン・スタンレーやヘッジファンド運営会社などの融資によってエタノール・プラントの建設がブームとなり、アメリカのエタノール生産は2年で3倍に拡大した。上院ではガソリンの代わりにエタノールの使用を推奨する法案も通った。まさに官民一体の取り組み。これで、二酸化炭素の排出が減り、みんながハッピーになれる…はずだった。

アメリカは集中投資が得意技。太平洋戦争のときはGMもFORDもBOEINGも殆どを軍需工場にして兵器を大量生産して物量戦で勝った。ITバブルの時もトラフィックを当てにして光ファイバーをバンバン張りまくった。何でも集中投下、一極集中なのである。大事のためには小事にこだわらない「しゃらくせぇ!」という感じ。エコについてもそう。

「逆エコ」

ところが、お膝元のアメリカのエネルギー専門家が、エタノールの利用は原油需要の減少にはつながらないと主張し始めた。その先鋒であるコーネル大学の研究者らは、エタノールの製造過程ではエネルギーの消費量が生産量を上回ると指摘。つまり、大豆やトウモロコシを精製する過程で消費する電力や薬剤の量をエネルギーに換算すると、原油1リットルを精製するよりも多くのエネルギーを消費するという。もっと言うと、1リットルのバイオエタノールを作るのに、1リットル以上の原油を使っている『逆エコ』になっているというのだ。

さらに、米国学術研究会議(NRC)は、エタノール生産が水不足を引き起こすと警告している。精製の過程で大量の水を使ううえ、エタノール向けの作物ばかり大量生産すると、灌漑用水が大量に必要となり、飲料水不足を引き起こす恐れがあるというのだ。これではエコどころではない。

「食べ物は食べ物として」

原油相場が1バレル当たり100ドルに迫る一方、上記のような事情を嫌気してエタノール市場は早くも低迷し始めている。ここ数ヶ月だけ見ても、アイオワ州のほかドイツなどでもエタノール蒸留プラントの閉鎖が相次いでいる。また、フロリダ州とジョージア州では、エタノールが蒸発しやすくスモッグが発生するとして、夏の間はエタノール入りガソリンの販売を禁止した。エタノールが蒸発する時に発生する酸化物がスモッグを引き起こし、環境汚染の原因になるということは、導入当初から指摘されていたことだ。二酸化炭素は減らない、有害物質は出る…これでは本末転倒である。

問題はそれだけにとどまらない。ガソリンの代わりにエタノールを使いましょう!という法案がアメリカ上院で可決されてから急速にエタノール精製の設備投資が進んだ結果、需給が逼迫して原料のトウモロコシや大豆の値段が暴騰。その煽りで食材の値上げが相次ぎ、日本にも値上げの余波がやって来ている。メキシコでは食材の高騰に怒った住民による暴動が起こった地域もあった。「地球を守る」という大義名分はいいとして、そのために水不足になったり生活困難になるのってどうなんでしょう?食べ物は食べ物として消費した方がよほどハッピーと思うのだけれど…。

『二酸化炭素を減らすために他のことには目をつぶるぜ!』という発想と、それに対する大量投資。煽りを喰らう周りの小国にはお構いなし。それでいて、リッター2〜3キロ位しか走らない巨大なピックアップトラックにエタノール入りのガソリンを入れる姿に、とってもアメリカンな感じがするのは私だけでしょうか。ま、らしいといえばらしいんですけどね。

※先週の「値下げされる“はず”」で書いたガソリンの『暫定増税』ですが、10年間『暫定延長』することが決まりました。カミさんに交渉して『暫定増額』してもらったお小遣いはすぐに元に戻されるのに、不思議ですね。

2007.12.08 | コメント[0]トラックバック[0]

値下げされる“はず”

ガソリン価格の高騰が止まらない。レギュラーガソリンは1リットル150円を超えてさらに上昇する勢いだ。しかし、来年4月に20円以上値下げされるとしたら…。

「期限切れとなる暫定増税」

道路整備事業に使途を限定した「道路特定財源」。その財源の大部分を占める揮発油税は本来の2倍の暫定税率(1リットル当たり48.6円)になっているが、これを担保する租税特別措置関連法が、来年3月末に期限切れとなる。とすれば、来年4月1日からガソリンは1リットル当たり24.3円値下げされる“はず”だ。現状のレギュラーガソリンなら130円台まで下がる計算になる。

また、新車購入時や車検時に支払う自動車重量税。本来は自家用車について車重0.5トン当たり2500円に道路建設促進のために3800円を上乗せして6300円になっている。本来の倍以上の税金を支払っていた計算だ。この自動車重量税も来年4月末に期限切れとなる。こちらも来年5月から自家用車の車重0.5トン当たり2500円に値下げされる“はず”だ。

「65兆円分の道路」

しかし本来の税率に戻すと、年間約5兆6000億円の道路特定財源の半分近い約2兆7000億円の減収となる。国土交通省が11月13日にまとめた今後10年間の道路整備の中期計画案は、道路特定財源の10年分を上回る65兆円を道路整備に充てる計画で、税率が元に戻ることは想定していない。これは道路特定財源を他の予算に使うこと(道路特定財源の一般財源化)を阻止するために大きく数字を出している可能性もあるが、一度掴んだ予算を放したくないという意図もあるのかもしれない。

「霞ヶ関の論理」

前に勤めていた会社から、人事交流で当時の大蔵省に派遣されたA君が「霞ヶ関の論理っていうのがあって、論理を逆にするんだなぁ。予算についても『これをするから、これだけ下さい』じゃなくて『これだけ欲しいから、これをします』って感じ」と話していた。例えるならこんな感じ。子供が親にお小遣いをねだるのに、「本が欲しいから、500円ちょうだい」と言うのではなく、「500円欲しいから、本を買いたい」と言う。もしこんな風に言われたら、世間一般の親は言うとおりすると思いますか?

必要な道路もあるだろうが、国内に65兆円分の道路が果たして必要か。予算から道路を考えるのではなく、必要な道路から予算を考えるべきで、論理を逆にする理由も必要も無い。道路特定財源を政争の具にする向きもあるようだが、景気が悪化する恐れがあるこの時期に、国民不在の議論をするのは御免蒙りたい。

でも、今度カミさんに「5千円欲しいから、靴買いたい」って言ってみようと思ったりもする。すぐにごめんなさいすると思うけど。

2007.12.01 | コメント[0]トラックバック[0]