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【ゆうゆうLife】向き合って 元劇団四季女優、井料瑠美さん(41) (2/3ページ)
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地元では当時、ALSという病気への理解はほとんどありませんでしたが、ようやく準備が進み、医療や福祉の人が受け入れ準備の会合をしてくれた日に、父は亡くなりました。「もういいよ」と言わんばかりにね。
病院での最後はICU(集中治療室)でした。父はICUのカーテン1枚隔てた所でほかの患者さんが亡くなっていくのを、ずっと聞いているわけです。そのたびに自分の死を思うのか涙を流すので、たまりかねて、父の耳を塞(ふさ)いだこともありました。
振り返ってみれば、死と向きあわざるをえなかった私たち家族に必要だったのは「心の救済」でした。
後に父が病床で書いた詩が出てきたのですが、そこには「音楽が自分を再生してくれる」というようなことが書かれていました。三度の食事より音楽が好きな父でしたから。その夢を闘病中にかなえてあげられなかったことに今でも悔いが残ります。
看病の経験は私の人生にも影響しました。本当に音楽を必要としている人のなかには、父のように劇場に来られない人がいるんだと気づいたのです。
どうしたら、そんな人に向けても表現できるのか。父が亡くなって10年ですが、常に模索しています。今年3月には、ALSとの闘病をテーマにした音楽朗読劇をチャリティーで公演しました。ベースは、全米でミリオンセラーとなった「モリー先生との火曜日」。ALSにかかった大学教授が、教え子と生きる意味について語り合う日々をつづったもので、実話に基づいています。父が亡くなった直後に原作に出会ったのですが、本の意味を理解するのに時間が必要でした。今回の公演を機に、患者さんのベッドサイドへも行くつもりで、生きる希望を伝えられる活動を続けたいと思います。
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