戦争が終わっても不発弾で市民の犠牲が続くクラスター爆弾。残虐なこの兵器の禁止条約を目指す大詰めの国際会議が始まりました。禁止に消極的な日本とは対照的に、全面禁止に方向転換した国からの現地報告です。
ベルギー軍・ミエダール基地。今回、特別に撮影を許可されました。
「これが88個の『子爆弾』が入る砲弾です」(ベルギー軍・タシオ大尉)
ベルギー軍が、国防のため40年以上にわたって保有してきたクラスター爆弾の訓練用サンプルです。現在の保有数は、およそ11万5000発。日本の自衛隊もこれと同じタイプの子爆弾を保有しているとされます。
「来年6月までにすべて廃棄する予定です」(ベルギー軍・タシオ大尉)
ベルギーは2年前、世界で初めて法律でクラスター爆弾の全面使用禁止を決定しました。
クラスター爆弾禁止に向けて何が国を動かしたのか、ここベルギーは1つのモデルケースを示していると注目されています。
最初に動いたのは1人の議員。医師として中東や東欧でクラスター爆弾や地雷による被害者の治療に当たったことが、法案提出の動機でした。
「クラスター爆弾は戦争が終わった後も市民を殺害し、負傷させます。これは反人道的な兵器なのです」(ベルギー・マフー上院議員)
しかし、軍や軍事企業などから強い反対の声が上がりました。それでも、法案成立を後押ししたのが国民の支持だったと言います。
ドイツとフランスに挟まれたベルギーは、二度の世界大戦でいずれも激戦地となり、世界で初めて毒ガスも使われました。今も毎年200トンもの不発弾が見つかります。
こうした“戦争の記憶”がクラスター爆弾禁止を支持する世論につながったとも言われます。
「世論の支持があれば、次は必ず議会が動き始めるものです」(ベルギー・マフー上院議員)
マフー議員が強調する政治と世論の重要性。また、当初反対していた軍側もクラスター爆弾の役割が終わったとの認識を示します。
「現在はより機動的な作戦をとることが可能なので、優勢な敵軍を止めるのに、そのタイプのクラスター爆弾はもはや必要ありません」(ベルギー軍・ジョーンズ少佐)
ベルギーと同じように戦争の記憶を持つはずの日本。しかし、日本政府のこれまでのクラスター爆弾禁止への消極的な姿勢は厳しい目で見られています。
「クラスター爆弾における日本政府の姿勢は、率直に言って恥ずべきものです。軍縮や人道問題におけるリーダーたる国としての評価を大いに損なっています。」(クラスター爆弾禁止連合 トーマス・ナッシュ氏)
何が日本を動かすのか、それとも最後まで動かないのか、世界から注目を集めています。(20日15:34)