気がつけば4月中旬。2週間振りのアトランタはすっかり衣替えして瑞々しい新緑&初夏の模様
4月2~15日の間、選挙監視プロジェクトの関係でネパールに出張していました。
選挙については、また改めて記す予定なので、今回はネパールでの経験の概観についてご報告します。
◇プロジェクトについて
選挙監視団は、長期監視団(通称LTO、Long-term observer)と短期監視団(STO、short-term observer)
に分けられます。
LTOは選挙の2~3ヶ月前から現地に派遣され、選挙管理員や政党関係者、地元リーダー等とミーティングを通じて地域の様子を十分把握することになります。そして、STOが派遣される地域を調整したり、複数の選挙区訪問のルート作成や宿泊場所確保等の準備も行います。
他方、STOは選挙の数日前に到着し、ブリーフィングの後、それぞれ担当する選挙区地域へ派遣されます。
カーターセンターは、LTOやSTOのリクルーティング、ロジ調整、クレデンシャル(監視団のID)手配、選挙監視フォーム等の準備を行い、LTOやSTOにブリーフィングを行い、必要な器材(衛星電話、寝袋、その他)を提供。
選挙後はプレスリリースや報告書を作成して、選挙が公平公正に行われたか、選挙結果が正当であるかの見解を示す。
◇ロジ・アドミ・オブザーバー
40名以上のSTOを受け入れるには人手が足りない、ということでアトランタから3人の助っ人が登場。
その助っ人の1人である私は、STOの到着・出発、チェックイン・チェックアウト、ホテルの施設調整係りという簡単そうで一番やっかいな役目を仰せつかったのだ。
ようするに、ホテル・会議場・レストラン等の調整及び窓口という訳。その他、担当地域に派遣されたSTOおよびLTOの朝晩の電話チェックインのため、ネパールの1日はと~っても長かった(><)
そんな日々の業務に追われ、選挙当日はホテルの外に出れる望みすら捨てかけていたところ、
午前7時投票開始をモニターしてくるよう指令を受けた。やった!日中も空いた時間を使って投票所を回ることができた。
オブザーバー用のクレデンシャル(ID)
国際NGOに対しては、インターナショナルのオブザーバーにしかIDが発行されないため、ネパールスタッフは皆通訳用のIDを代わりに取得。
ネパール事務所のスタッフは、ネパール人スタッフ以外は、全て欧米人スタッフ。(本部がアメリカなので当然アメリカ人が主。)が、私の仕事の関係上、ネパール人スタッフやホテルのスタッフ、STOとのやりとりが中心だ。
STOは世界各地から集まっているので、多様性な雰囲気がとても居心地良く感じられ、おかげで彼らとはいい付き合いができたなーと思っている。
私は「現地人」にウケがいいらしく、渡航先では現地スタッフや道行く人と意気投合してしまうことが多い。
親しくなったレセプションのネパール人女性は、ホテル勤務の他に、現地NGOで麻薬や不法取引等で捕まった人々の子供がストリードチルドレンとして暮らすことのないよう教育支援や社会活動支援を行っている。
必ずしも紛争によって親を失った子供にフォーカスを当てている訳ではないが、子供の権利の保護という側面では私の関心と共通点がある。施設についてのブローシャーをもらい連絡先を交換し、次ネパールに来る際は是非彼女の第二の活動場所を訪問させてもらうことを約束した。
また、たまたま声をかけてくれたチベット出身のネパール人大学生2人と親しくなり、チベットの味に近いと彼ら絶賛の定食屋へ案内してもらった。
ネパール人はとても気さくでフレンドリーだ。この国で数年働けたらいいな。
◇世界はホントに狭い…
IDEAS同窓生の1人にネパール人がいる。General Administration Ministry勤務のBuddhiだが、この時期はPolling Officer(投票所の長。彼が他のPolling staffに支持を出す。)としてカトマンズの選挙区で働いていた。
(2年振りのBuddhiは全く変わっていなかった。相変わらず饒舌トークも強いアクセント"Z"apanも健在。)
STOの1人は、私がYorkで知り合ったフィリピン人の旧友(しかもミンダナオ島の同じ町出身!)だという事実が判明した。2人ともコミュニティ開発の分野で活躍している。
また、JETプログラム(Japan Exchange and Teaching Program
)で日本に2年滞在したことのあるLTOがいた。
アメリカ生まれの彼は、スペイン語・ポルトガル語・タガログ語を自由に操り、現在はネパール語を勉強中のツワモノだ。日本語はもかなり流暢に話せ、私を驚かせてくれた。
他にも私とほぼ同じ時期にアフガニスタンで働いていたSTOも何人もいたりして、今後もどこかで偶然出会うかもしれないそんな予感を感じさせてくれる出会いがあった。
おまけに、ネパールへ向かう途中のトランジット先のロンドンでは、卒業式帰りのYorkのクラスメートにばったり遭遇!彼女はアフガニスタンへ帰る途中で、ロンドン→ドーハ間は同じ飛行機だったのだ。
本当に世界は狭いのね。そして人と人のつながりって面白い
そんな訳で、緊張感と寝不足でふらふらになりつつも概して、いい経験をさせてもらったと思う。
裏方は結構ばたばたしていて、スタッフ内の情報管理には疑問符がつくが、STOの方々にはSTO受け入れ・派遣態勢がかなり入念に準備されていて、効率的なミッションであるとの意見を多々いただいた。
改めて感じたことは、プロジェクトの実施には、裏方のマネージメントと表方のマネージメントの両方が不可欠であるということ。選挙管理委員や政党関係者等との調整や事前情報収集を行い、選挙当日は公正かつ公平な目で選挙プロセスを監視する。プロジェクトの第一の目的である。
が、それだけではプロジェクトそのものはまわらない。プロジェクトの関係者、つまりカーターセンターのスタッフ(+もちろんカーター夫妻については言及するまでもないが)、LTO、STOをどのように動かしていくか(あまり良い表現ではないけどね)というのも重要な要素だ。当日になって急に予定が変更するなんてことは当たり前。その情報をいかに関係者に伝え、必要な対応を求めることができるかは、裏方のスタッフにかかっている。情報がうまく回らなければ、表方にも悪い影響を与えかねない。今回、残念ながら一番下っ端の私は、色々な情報が錯綜して混乱する場面が多々あった。ネパール人スタッフと愚痴りながらも、我がスタッフを反面教師として、いずれ自分が実際にプロジェクトをまわす際には、この点を十分配慮したいと思う。