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築地のシャッター、午後3時からの美術館

2008年05月19日10時07分

 東京の台所、築地。築地市場に通い、ファンになった大学院生の呼びかけに、神奈川県など地元の外からも学生や会社員が集まり、中央卸売市場の場外の商店のシャッターに絵を描いている。題して「15時からの美術展 築地シャッターギャラリー」。築地場外市場商店街(中央区築地4丁目)で、店がほとんど閉まってしまう午後にも、築地に来る観光客らに楽しんでもらおうと企画した。「ギャラリー」は間もなく完成する。

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シャッターに絵を描く参加者ら

 呼びかけ人で築地シャッターギャラリー実行委員長が、東大大学院の修士課程2年生の村上靖さん(24)だ。水産学を学び、サメの遺伝子を研究している。実験で使うイカや貝などを入手するため、2年ほど前から築地市場に足を運ぶようになり、築地ファンになった。

 築地には多くの観光客が訪れるが、場外では昼過ぎに閉まってしまう店が多く、ほとんどの客は本来のにぎわいを見ることはできない。そこで、シャッターに築地のにぎわいや歴史をモチーフにした絵を描くことを思いついた。

 村上さんが昨秋、場外市場の商業団体などでつくるNPO法人「築地食のまちづくり協議会」に提案したところ、同会が快諾。今年1月にインターネットの交流サイト「ミクシィ」で、絵のデザインと実際に絵を描く参加者を募集した。

 呼びかけに、山梨や群馬県など地元以外のところから約60人が集まった。その多くは、これまでほとんど築地を訪れたことがない人たちだ。

 4月下旬から、同商店街の14店のシャッターに絵を描き始めた。マグロの競りや荷物を運ぶ3輪自動車「ターレット」に乗る人、近くの波除稲荷神社(築地6丁目)の獅子頭にくわえ、築地本願寺(築地3丁目)の花まつりなど、絵はすべて地元をモチーフにしている。今月末にはすべて完成する予定だ。

 参加者の一人、世田谷区に住む大学2年の男性(27)は、シャッターギャラリーがきっかけで初めて築地を訪れた。「市場に一歩入ると独特の活気があり異質な空間だと感じた。シャッターに絵を描くことは面白い」。

 実行委員長の村上さんは、自ら絵を描いていると、「街がきれいになった」「うちのシャッターにも描いてほしい」と声をかけられ、うれしかったという。「店が閉まった後に来たお客さんにも、築地のにぎわいを感じ、また来ようと思ってもらえる仕掛けにしたい」と話している。(大井田ひろみ)

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