■「捨てるのはもったいない」 保護者から反発も
福岡市教委は本年度から、同市立の全146小学校で、児童がパンなどの給食の食べ残しを持ち帰ることを全面禁止した。食品衛生上の観点から安全管理の徹底・強化を図る全国の動きに沿った措置で、「持ち帰った給食に異物が入っていた」という保護者からの苦情にも配慮した。一方で、保護者からは「食べずに捨てるのはもったいない」「食べ物を大事にする心が育たない」と禁止措置に反対する声も上がっている。
給食の食べ残しについては、堺市で1996年に起きた病原性大腸菌O157による集団食中毒事件を受け、文部省(当時)が97年、給食の持ち帰りを禁止する「学校給食衛生管理の基準」を策定。全国で禁止する学校が増加した。
福岡市も同年、文部省の基準文書を全小学校に送付し、原則禁止としたが、各校からここ数年、持ち帰りの禁止の有無に関する問い合わせが相次ぎ、禁止が徹底されていないことが判明。今年4月、あらためて全校に全面禁止を通知した。
市教委によると、児童が給食を持ち帰った際、保護者から「パンにカビが生えていた」「髪の毛が入っていた」という報告が年に数件寄せられ、安全面でも不安があったという。
これに対し、今回の禁止徹底を受け「自宅でおやつにしていたのに、もったいない」「学校で食べ物を粗末にするのは問題だ」との声も寄せられるようになったという。
食べ残した給食の大半は市教委や市の委託業者が回収し、処分。同市の小学校から出る給食の食べ残しは年間約750トンに及ぶという。
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■学校側の責任逃れでは 小田隆弘・中村学園大教授(食品衛生学)の話
持ち帰った食品で問題が発生した場合に責任を取りたくない学校側の姿勢の表れではないか。子どもに食べ物が傷んでいないか見極めるよう教えることの方が、食育として大事なはずだ。
■安全第一の措置だ 大串計司・福岡市教委健康教育課長の話
自宅で1人で食べた子どもが体調を崩しても目が届かないし、その原因が調理工程にあるのか、保管方法にあるのか追及しにくい面もある。持ち帰り禁止は、子どもの安全を第一に考えた措置だ。
=2008/05/15付 西日本新聞朝刊=