福岡市教育委員会は本年度から同市立小学校でパンなどの給食の残りを持ち帰ることを全面禁止した。「持ち帰った給食に異物が入っていた」などの保護者の声へ配慮したものだが、反面「食べずに捨てるのはもったいない」「食べ物を大事にする心が育たない」などの声も出た。
給食の持ち帰りを禁止する「学校給食衛生管理の基準」が1997年に文部省より策定され、全国でも禁止する学校が増えた。
福岡市でも同年に文書を全小学校に送り、原則禁止としていた。しかし、ここ数年持ち帰り禁止についての問い合わせが相次ぎ、禁止が徹底されていない現状がわかった。
そのため、2008年4月に再度全面禁止を通知したというわけだ。
食べ残した給食の大半は回収して処分される。福岡市の場合年間で、約750トンの食べ残しが出るという。
保護者から「持ち帰ったパンにカビがはえていた」「髪の毛がはいっていた」などの声が年に数件出ており、安全面で不安がありあらためて徹底したという。
だが、他の保護者たちからは「自宅でおやつにしていたのに、もったいない」「学校で食べ物を粗末にするのは問題だ」といった声もでている。
この件に、小田隆弘・中村学園大教授(食品衛生学)は
「持ち帰った食品で問題が発生した場合に責任を取りたくない学校側の姿勢の表れではないか。子どもに食べ物が傷んでいないか見極めるよう教えることの方が、食育として大事なはずだ。」と話している。
また、大串計司・福岡市教委健康教育課長は
「自宅で1人で食べた子どもが体調を崩しても目が届かないし、その原因が調理工程にあるのか、保管方法にあるのか追及しにくい面もある。持ち帰り禁止は、子どもの安全を第一に考えた措置だ。」と話している。
給食の持ち帰りに限らず、家庭での関わり方の違いの差が大きくなっているように感じる。
「うちの子は家でそうじをさせてませんから、学校でもぞうきんがけはさせないで」などということをあたりまえのように言う保護者がいる世の中だけに、今までの常識が通用しない場合もあるだろう。
しかし、給食を通して食べ物の大切さを学ぶ事も大事だし、残飯の量を知り、食糧難の国もあることを学んだ時に何を感じるかも大事なはずだ。
衛生面も大事だろうが、食べ物にはカビが生えることを知る機会も要るだろう。
教育委員会や学校も子どもを育てるには何が必要かを再度考える時のようだ。
(編集部:TAKESHI)
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