小沢王国に政争? 元秘書、旧あるじに挑戦

インタビューに答え、「小沢先生に挑戦することを宣言する」と明言する高橋氏=10日、盛岡市の自民党岩手県連
 自民党岩手県連から次期衆院選岩手4区への出馬を要請された元衆院議員高橋嘉信氏(54)が、事実上の出馬表明を行った。民主党の小沢一郎代表(65)=岩手4区=の元秘書。かつての「懐刀」の宣戦布告に小沢陣営は平静を装うが、岩手県政界には波紋が広がり始めた。「(小沢氏に対する)封印を解く」と揺さぶる高橋氏が何を語り出すか。岩手4区が一躍、全国の注目区になりそうだ。(盛岡総局・安野賢吾、岩崎泰之、水沢支局・宮崎伸一)

■挑  発
 「本日をもって、小沢先生に挑戦することを宣言する」。10日、盛岡市の自民党県連事務所。高橋氏は県連幹部と会談後、明確に言い放った。

 高橋氏はこの日、「県連改革本部」の本部長代行就任を受諾。正式な出馬表明は「(擁立作業中の)1区候補者のめどがついてから」と避けたが、小沢氏を「政策、政治手法、政治姿勢でも間違っている」と挑発した。

 高橋氏は小沢氏秘書を約20年務め、県内選挙を仕切ってきた。2000年の衆院選で自由党の比例代表(東北)候補として初当選、一期で引退した後に民主党を離党し小沢氏と決別した。04年参院選は岩手選挙区で落選した自民党推薦候補を支援し、自ら出馬し落選した06年の奥州市長選でも小沢氏に近い候補らと戦った。

 「相手を知る人物を候補に」と、3月下旬から擁立を目指してきた自民党県連は活気づく。

 「一緒にやってくれるというだけで120パーセント満足だ」と菊池勲会長。千葉伝幹事長は「県議中心の『自分党』的選挙だったが、今後は組織的な選挙を行える態勢を組める」と、「選挙のプロ」に期待した。

■警  戒
 自民党県連は国政選で民主党に連敗続き。次期衆院選は現職の鈴木俊一元環境相(2区)の議席死守が至上命令だ。「高橋氏の登場で、民主党は4区にも勢力を注がざるを得なくなる。当然、2区は手薄になる」とある県連幹部はもくろむ。

 これに対して民主党は「静観」を決め込む。「どういう状況になろうとも解散総選挙に備えるだけ」と県連の佐々木順一幹事長。高橋氏が「封印を解く」と発言していることにも「(何を封印してきたのか)意味が分からない」と突き放す。

 小沢氏の地元、奥州市在住の県議は「秘書の肩書を失った高橋氏から支持者が離れるのは目に見えている」と神通力を否定する。

 一方で、小沢氏の地元後援会からは「身内だっただけに、戦いにくいことは確か」「秘書時代に金庫番をしていた高橋氏が暴露本を出すうわさもあった。風評被害を受ける恐れもある」と警戒の声も上がる。

■注  視
 高橋氏の動向には他党関係者も注目する。4区に出馬予定の社民党県連代表小原宣良氏(64)は「小沢氏への異議をどう唱えるか。中傷合戦は迷惑だが、政策論争なら大いに結構だ」と歓迎する。

 小沢氏は中選挙区時代、同じ自民党だった椎名素夫氏(故人)と激戦を展開した。当時を知る関係者は「10年戦争の始まり。奥州市が政争の街に戻る」と指摘する。

 決戦はどう展開するのか。高橋氏は出馬理由について「正式表明の時に申し上げる」としか語っていない。

 「別に何もありません。県民が判断します」。小沢氏は13日の記者会見で、高橋氏出馬について淡々と語った。
2008年05月15日木曜日

岩手

社会



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