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【特集】 検証 緊急臨時的医師派遣
地域医療再生への道筋
2008.5.9
政府が昨年2度にわたって実施した緊急臨時的医師派遣―。地域の中核的な病院でさえ診療科の閉鎖を余儀なくされるなど、崩壊の危機に直面した地域医療を立て直すため、文字通り緊急的に実施された。この派遣事業は地域医療にどのような影響を与えたのだろうか。その後を検証する。
地元医療関係者の評価は好意的
地域医療を“皆で守る”気運高まる
政府の緊急臨時的医師派遣システムを活用した地域の中核病院や都道府県関係者らは、派遣期間が終了した現在も引き続き地域医療の確保に取り組んでいる。医師派遣事業の“その後”に対する評価は地域によって異なるものの、「地域医療は自分たちで守らなければ」という意識が高まる呼び水になったという点では共通しているようだ。
政府の緊急臨時的医師派遣は、都道府県の派遣要請を受けた厚生労働省の地域医療支援中央会議が優先順位や派遣の是非を検討。2007年6月と10月に、北海道、岩手、栃木、和歌山、大分―の5道県に医師を派遣することが決まった。
国の呼び掛けに応じて医師を派遣したのは、国立病院機構、日本赤十字社など。救急医療など地域の中核的な医療機能を果たすのが困難になった7病院に対して、半年程度、産婦人科、内科などの医師が派遣されている。
「一番苦しい時を乗り越えて、その後も医師確保ができた。非常にうまくいったと思っている」と振り返るのは栃木県・大田原赤十字病院長の宮原保之氏。同院では、国の医師派遣をきっかけに地元医師会との連携を強化。初期救急と2次救急の役割分担の明確化を進めた。
「派遣そのものは終わったが、地域医療について地域の人も医師会も自分たちのこととして考えるようになった」−。大分県福祉保健部医務課では、国が、医師を派遣するほど、事態が深刻化していることに気付かせ、地域医療確保に主体的にかかわる効果を生んだと指摘する。
そのほか、国の呼び掛けに個人として応じた医師が、派遣期間終了した後も派遣先にとどまる新宮市立医療センター(和歌山県)の事例もある。
岩手県宮古市には、県立中央病院の支援のほか、「地域医療を守りたい」として神奈川から週1回応援に駆けつける医師に支えられている県立宮古病院がある。
● 国は派遣事業拡大をとの声も
国の医師派遣事業を活用した地域はそれぞれ、医師確保に向けた取り組みを始めている。若手医師に選ばれる病院づくり、救急医療における医師会との連携強化、地域住民の受療行動の変化―といったキーワードが取材を通じて浮かんできた。
一方で、都道府県単位での取り組みには限界があり、「国の派遣事業拡大を」と求める意見も北海道などで挙げられている。道は、岩手と同様2病院が国の医師派遣事業の対象になった。全国に先駆けて医療対策協議会を04年に立ち上げ、道内の3大学が派遣先病院を協議する「全体調整システム」も構築して医師確保に努めるものの、医師不足病院の派遣要請に応えられる割合は年々低下しているのが実情だ。そうした地域であっても、医師を確保できる対策が求められている。
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