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訪問介護が“窃盗天国”に…ビジネス至上主義の影で

5月10日16時25分配信 産経新聞


 介護労働者の人材不足が深刻だ。待遇への不満などによる高い離職率が背景にあり、特に「訪問介護」の現場には、仕事量増加や介護員の質低下など多くの問題が横たわっている。厚生労働省も4月中旬、有識者らによる「介護労働者の確保・定着等に関する研究会」を立ち上げるなど対応に躍起。高齢者の自立を促し、社会全体で介護を担おうとする「介護保険制度」が始まって8年が過ぎた今、現場では何が起きているのか−。(道丸摩耶)

■消える現金 盗んでいたのは…

 「どうして渡した生活費までなくなるんだ。愛人でもいるんじゃないのか」
 都内の会社役員の中島彰さん(仮名)が、脳梗塞(こうそく)で倒れ、大手介護業者「コムスン」=事業譲渡=の訪問介護を受けていた父親(86)をそう罵倒(ばとう)したのは、3年ほど前のことだ。父親の家を訪れるたび、年金のほか毎月渡していた生活費が消えている。
 中島さんは父親に家計簿をつけさせようとしたが、手が不自由なため、うまくいかない。痴呆(ちほう)症状も現れるため、記憶も定かではない。
 ヘルパーが現金を盗んでいた−。その事実が分かったのは、1年近くたった後だった。

■車いすの男性けり倒し

 昨年11月、コムスンの元ヘルパーの男(22)が、介護を担当する男性から現金などを奪ったとして、強盗の疑いで警視庁に逮捕された。男は仲間と共謀し、車いすに乗っていた男性をけり倒した上、キャッシュカードが入った財布を奪っていた。中島さんのケースよりも、さらに悪質だ。
 「ヘルパーによる窃盗は日常茶飯事だった」。こう明かすのは、都内の中心地域を統括していたコムスンの元社員。元社員は「担当していた5年間に、100件以上の窃盗事件があった。全体で2000人いるヘルパーのうち、5%が犯行を行っていた計算になる」とも打ち明ける。
 こうした“窃盗天国”を作り出したのは、訪問介護という秘匿性の高い環境と、ヘルパーの低いモラル意識だ。
 「介護をお願いしている立場上、信頼できないヘルパーが来たところで、文句は言えなかった。まさかヘルパーが犯罪行為をするなんて…」と中島さん。被介護者の多くは認知症や身体まひなどを患っており、被害に気が付かなかったり、訴え出ることができなかったりすることも多い。
 「私のように家族が気にしていればいいが、放置している家だと、被害に遭ったことすら気が付かないだろう」と中島さんは危惧(きぐ)する。

■未経験者でも研修1カ月で現場へ

 なぜ、ヘルパーによる窃盗が多発するのか。
 ホームヘルパーの資格には、1〜3級まで3段階ある。訪問介護事業者が採用の基準とするのは主に2級以上だ。2級の資格を取るには、130時間の研修が必要となる。
 元社員によると、コムスンは業界最大手になるためヘルパー2000人の採用を目指していた。「よほどのことがない限り応募者は断らない。断った場合、その理由書をつけなければならないほどだった」(元社員)という。
 当然、過去の経歴が問われることはなく、未経験者でも「1カ月の研修でヘルパー2級の資格を取得させ、すぐに派遣させていた」(同)。2人で介護先に行けば2人分の報酬が必要となるため、すぐに独り立ちさせる。ヘルパーとしての資質が問われる機会はなきに等しいのだ。
 拡大路線を続け、慢性的な人材不足に陥った業界。ヘルパー質低下の背景には、ビジネス至上主義という「開き直り」が見え隠れしている。

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最終更新:5月10日16時47分

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