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【コラム・断】麻酔科医の逆襲

2008.5.8 03:33
このニュースのトピックスコラム・断

 最近、病院に所属しないフリーの麻酔科医が増えている。医療機関と個別に契約して、手術のときだけ麻酔を請け負うのだ。これだと自分の予定を優先できるし、休みも取りやすい。当直もないし、緊急手術にも応じなくていい。それで年収が5000万を超える者も少なくないという。

 先日、大阪府下の公立病院で、麻酔科の常勤医を募集したが、年収は3500万円だった。他科の医師の倍以上の額である。フリーの麻酔科医を基準にするとそういう額になるらしい。

 今、多くの病院で麻酔科医不足のために、手術の件数が制限されている。外科医も看護師も手術室も空いているのに、麻酔科医がいないために手術ができないのだ。

 このような圧倒的な売り手市場を背景に、麻酔科医はどんどんフリーとなり、好条件の勤務を続けている。病院に残って割安の収入で、当直も緊急手術もこなす奇特な麻酔科医はいないものか。

 いや、それはむずかしいだろう。なぜなら、この状況はいわば麻酔科医の積年の恨みによる逆襲だからだ。

 私も麻酔科に所属していたからわかるが、外科医の中には麻酔科医を陰で軽んじる者も多いし、患者も直接病気を治さない麻酔科医にはめったに感謝しない。

 そういう歪(ゆが)んだ状況が、医療崩壊が進む今、麻酔科医の不足を招き、圧倒的な売り手市場を生み出しているのだ。その背景を知れば、フリーに転向する麻酔科医を、決して非難することはできない。(医師、作家・久坂部羊)

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