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京都に町家風コンビニなど続々、新景観政策に対応

2008年05月08日

 古都の風情を守ろうと、景観保全に取り組む京都市が、全国の自治体の中でも特に厳しい規制を伴う「新景観政策」を導入してから半年余り。町家風のコンビニエンスストアや、シンプルな外観の建物が街角に増え始めた。建設や改築費は従来より高くなり、屋外広告も大幅に制限。企業も景観とビジネスの両立に工夫を求められている。(溝呂木佐季)

写真新景観政策の規制に合わせて建てられた「ファミリーマート京都三条高倉店」=京都市中京区
写真「ローソン八坂神社前店」の和風看板。ウインドーの一部は面格子になっている=京都市東山区
写真屋根付きの門や面格子の窓が町家を思わせる「五洛」=京都市上京区
写真外装を一新した際、シックな濃紺のパネルで覆った「モンブラン京都ブティック」=京都市下京区

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 京都市中京区の三条通沿いに2月に新築オープンした「ファミリーマート三条高倉店」は、屋根がなだらかに傾斜し、壁は土壁のような渋い色合い。三条通かいわいは、新景観政策の対象となる美観地区のひとつ。周辺の町家に調和するよう屋根の勾配(こうばい)や軒先の長さ、外壁の色も細かく定められた。同社の営業担当は「特別仕様のためコストはかかったが、特徴ある外観が客の目を引く効果もある」。

 東山区の「ローソン八坂神社前店」は2月、看板をチェーンカラーの青から白に変えた。周辺は八坂神社や知恩院など歴史遺産が多く、屋外広告が厳しく規制される。看板面積が壁一面につき5平方メートル以内に制限されたため、和紙調で温白色の看板を採用。「ぼんぼりのような雰囲気」(ローソン近畿支社)にして規制外の「照明」として認められた。改装の立案に半年かかり、費用も通常の2.5倍に膨らんだが、同社担当者は「京都で最も目立つ場所で、企業のPRや売り上げ増も見込んだ投資」と話す。

 3月にオープンした万年筆ブランド「モンブラン」の京都店(下京区)は当初、女優の姿をビル壁面に掲げた大型広告を考えたが、規制を踏まえて濃紺色の壁に白いロゴの看板をかけるデザインにした。担当者は「京都の文化歴史に敬意を払い、規制を守るのは当然」と話す。

 住宅メーカー積水ハウス(大阪市)は昨年7月から、規制に対応した戸建て住宅「五洛(ごらく)」を売り出した。地区ごとに異なる外観の基準を満たすため、緩傾斜の屋根や格子状の門を備える。注文も入っているという。同社広報部は「同様の景観政策が他の地域にも広がれば、京都での実績が生かせる」と話す。

 工務店などに住宅資材を販売する「平安建材」(京都市)も、規制に合わせた外装材や門扉などを用意。地区ごとに違う規制や注文主の希望に応じ、標準的な木造2階建てで計24タイプの住宅が建てられるようにした。

 建設会社ダイマルヤ(京都市)は、中京区の扇子店が移転した跡地にマンションを建設中。店舗の町家を残し、マンション1階に組み込む形で再生した。商家特有の細長の虫籠(むしこ)窓や格子戸を生かした。昨夏に着工したため新景観政策の規制は受けないが、「市の政策を踏まえ、風情ある町並みづくりに協力したい」(同社)と考えたという。

 京都府立大の宗田好史准教授(都市計画学)は「景観に配慮した建物が増えれば、良質な環境を求める人が集まって町が活性化される。規制に伴うコスト増には反発もあるだろうが、市は景観保全の大切さを丁寧に説明する努力を重ねるべきだ」と話す。

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 〈キーワード・京都市の新景観政策〉 6条例の新設・改正と都市計画の変更からなり、昨年9月にスタート。31メートルを超す建物を市街地のほぼ全域で禁じる高さ規制▽屋根の傾斜角度や外壁の色、日本瓦などの使用を地域ごとに定めたデザイン基準▽屋上設置や点滅照明の看板を市全域で禁じ、既存の物も7年以内の撤去を定めた屋外広告規制▽「大文字の送り火」など38の歴史的な眺望の保全――などが柱。規制で影響を受ける市民に配慮し、分譲マンション建て替えに1世帯に上限700万円融資する制度も盛り込まれた。

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