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憲法記念日 平和に生きる権利 今こそ(5月3日)昨年のいまごろは、安倍晋三政権下で改憲の手続きを定める国民投票法案が大きな議論になっていた。 いま、福田康夫首相が憲法に言及する場面はほとんど見られない。 ねじれ国会の下、年金や道路財源問題など早急に取り組まねばならない課題が山積しており、それどころではないというのが本音だろう。 衆参両院に設けられた憲法審査会は運営規定もまだ決まっていない。二〇一〇年に改憲発議は可能になるが、改憲の動きは表面的にはやや勢いが落ちてきたようにも見える。 日本国憲法が施行されてきょうで六十一年となる。憲法とは何か、私たちの暮らしにどうかかわるのか。この機に思いをめぐらせてみたい。 *軽視された違憲判断 国民主権、基本的人権の尊重、平和主義を基本原理とする現憲法には人々の「戦争は二度といやだ」という強い願いが込められている。 なかでも前文と九条は世界に向けた平和と不戦の表明でもある。 その誓いを戦後、政府はないがしろにしてきたのではないか。そう問いかける司法判断が四月十七日、名古屋高裁で示された。 イラクに派遣された航空自衛隊の活動は武装兵士を戦闘地域に輸送するものであり、憲法九条が禁じる武力行使にあたると指摘したのだ。 自衛隊を海外に送り出すために憲法を拡大解釈してきた政府の姿勢を厳しく戒めるものとなった。 政府は、判決をことさら軽視しようとしている。隊員の心境について航空幕僚長はお笑いタレントのせりふを引用し、「そんなの関係ねぇという状況だ」と言った。 憲法は国の最高法規だ。九九条は大臣や国会議員、公務員らに憲法の尊重と擁護義務を負わせている。 にもかかわらず政府が違憲判断を真摯(しんし)に受け止めず、文民統制を崩しかねない制服組の発言を放置する。法治国家としてどうなのだろう。 政府はイラク派遣を人道支援、国際貢献と言ってきた。しかし、政府がいまなすべきことははっきりしている。イラクから撤退し、憲法にのっとって武力に頼らない国際貢献のあり方を考え直すことではないか。 *生存権が脅かされる 憲法の前文に「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免(まぬ)かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」とある。 その「平和に生きる権利」がいま脅かされ、侵害されてはいまいか。 三十一歳のフリーターが月刊誌に発表した「希望は戦争」という論文が昨年、反響を呼んだ。 戦争は社会の閉塞(へいそく)状態を打破してくれる。生活苦の窮状から脱し、一人前の人間としての尊厳を得られる可能性をもたらしてくれる。戦争は悲惨でもなくむしろチャンスだ−。 慄然(りつぜん)とさせられる物言いだが、こうした発言が出てきた社会のあり様(よう)を深刻に考えなければなるまい。 米国では実際に、貧しい若者たちが生活の保障を求めて軍に志願し、イラクへと送られている。 憲法二五条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とうたっている。 しかし、ワーキングプアと呼ばれる新たな貧困層が増え続けている。年収二百四十万円以下が一千万人を超え、百万円以下も珍しくない。 後期高齢者医療制度にお年寄りから悲鳴が上がっている。社会保険庁のずさんな管理で、わずかな年金さえ受け取れない人がいる。生活保護世帯は全国で百万を超えた。 二五条は二項で「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と定めている。それを実践し、憲法を暮らしに定着させるのは国の責務なのだ。 *軍事に頼らぬ平和を 北海道新聞社が四月に行った世論調査によると、七割の人たちが憲法を改めるべきだと答えている。 「時代の変化に応じた方がよい」との理由がもっとも多かった。環境権やプライバシー権、知る権利といった、新たな権利の保障などが念頭にあるのだろうか。 ただ、これらの人権は現憲法でも保障されているとする憲法学者は多い。確かに憲法は「不磨の大典」ではない。国民的論議を広げていくことは必要だろう。 九条については改憲容認の人たちでも、六割近くが変更しなくていいと答えた。逆に変更して戦力保持を明記するべきだとした人は大幅に減って、三割にとどまった。 自民党の新憲法草案は、現憲法前文の「平和のうちに生存する国民の権利」を捨て、戦力不保持と、交戦権の否認を定めた九条二項を削除し自衛軍の創設を盛り込んでいる。 戦後、海外で一度も武力行使をせず、血を流さなかった日本の姿を大きく変えることになる。 イラクの惨状は、武力で平和はつくれないという当たり前のことを見せつけた。軍事力に頼らず平和を目指そうとの流れが世界で生まれつつある。平和憲法を持つ日本がその先頭に立ってもいいのではないか。 |
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