クローズアップ

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷
印刷

クローズアップ2008:大阪地裁所長襲撃2審あす判決 揺らぐ検察の構図

 大阪市住吉区で04年2月、大阪地裁所長が若者数人に襲われた事件で、強盗致傷罪に問われ1審で無罪とされた〓(そう)敦史(33)と岡本太志(30)の両被告=いずれも求刑・懲役8年=の控訴審判決が17日、大阪高裁(片岡博裁判長)で言い渡される。事件では、共犯として逮捕された少年2人について大阪家裁が「無罪」にあたる不処分決定を出し、検察が描いた事件の構図が大きく揺らいでいる。2被告の判決が、少年2人の抗告審に影響を与えるのは必至で、その判断が注目される。【川辺康広】

 ◇1審・少年供述を否定

 事件は04年2月16日午後8時35分ごろ、住吉区の路上で起きた。帰宅途中の鳥越健治地裁所長(当時)が後方から男に体当たりされ転倒。「金出せ。殺すぞ」などと脅され現金6万3000円を奪われた。所長は腰の骨を折る重傷を負った。

 目撃者や有力な物証がなく捜査は難航したが、大阪府警は04年5~6月、当時13~16歳の少年3人を逮捕・補導。少年の供述から〓、岡本両被告を同年6月14日、逮捕した。両被告は逮捕直後から一貫して否認したが、捜査側は〓被告と少年3人の計4人が実行役で、岡本被告が見張り役とみて起訴した。

 事件現場近くの防犯ビデオには、犯行グループとみられる4人が走り去る姿が映っていた。裁判では、(1)この映像が鮮明でなかったため、映像の解析結果が〓被告らの身長と矛盾しないか(2)両被告の逮捕につながった少年の供述の信用性--が焦点になった。

 06年3月の1審・大阪地裁判決はビデオについて、裁判所が選任した鑑定人の解析と、検察側が提出した鑑定結果を検討したうえで、「〓被告(身長183センチ)のような高身長の人物は存在しない可能性がある」と認定。少年3人の自白についても「取調官による圧迫的な取り調べで誘導されたものと見るべきだ」と信用性を否定した。

 ◇無罪なら裁判終結も ビデオ再鑑定、判断が焦点に

 2審・大阪高裁でもビデオの解析が争点になった。検察側は1審で犯行グループの身長の範囲を165~186センチとしていたが、「163~189センチ」とする新鑑定を提出。「新鑑定は多くの実測データに基づいたもので、正確。被告の身長と矛盾しない」と主張した。

 控訴審で検察側は、少年の供述についても「自白は信用できる」と反論しており、高裁がビデオの解析結果と併せてどう判断するかがポイントとなる。

 一方、逮捕・補導された少年3人のうち、刑事責任に問われなかった当時13歳の少年を除く2人は、家裁で「無罪」にあたる不処分決定を受けたが、検察側の抗告により再審理中。両被告が再び無罪となれば、検察側が上告を断念し、少年の審理も含め、一連の裁判が終結する可能性がある。

 審理は複雑な経緯をたどっているが、判決で実態が解明されるのか。

毎日新聞 2008年4月16日 大阪朝刊

クローズアップ アーカイブ一覧

 

おすすめ情報