5月1日、世田谷区の三軒茶屋駅近くにあるキャロットタワー内で、MIAU(インターネット先進ユーザの会)のシンポジウム「青少年ネット規正法を考える」が開かれた。今回のシンポジウムは数日前に関係者に知らされたもので、まさに「緊急」という感じの開始であった。
中川譲氏(撮影:三田典玄) 次にマイクロソフト株式会社技術統括室CTO補佐の楠正憲氏が講演。やはり企業の立場としては基本的に「既に日本はネットの犯罪そのものも非常に発生率が低く、それはネットの黎明期から、我々民間がモラルをちゃんと守ってきて、ここまで来たものだ。基本的に法規制は必要ない」という立場であることの説明をした。 また、多くのネットにかかわる犯罪は「ネットの拡大とともにネットが使われるようになった」というだけのことであり、「ネットがあるから」起きた犯罪ではない、と言えると思う、と付け加えた。 三番目の講演者は東京大学の崎山伸夫氏。特に今回の日本の「ネット規正法」に類似する各国の法律や状況についての説明があった。文化の違い、考え方の違いが多くこれらの法律もその国ごとに違う、という現状を語った。 マイクロソフト 楠正憲氏(撮影:三田典玄) 5分の休憩をはさんで、四番目の講演者はコンピュータソフトウエア著作権協会の久保田裕氏。久保田氏は、他の講演者とは違い、「父親として参加」し、そのために背広は着てこなかった、ということだ。 それはともかく氏の話には、崎山氏の講演ではがカバーしきれなかった中国の状況を具体的にレポートしており、これも非常に興味深かった。中国では、既にP2Pソフトウエアの利用者はISPレベルで完全に把握できている、としており、その「監視」の徹底していることの怖さ、なども指摘された。 最後の講演者はMIAUの代表幹事をしている小寺信良氏。小寺氏はAV機器評論家、ラムにストとしてあちこちのサイトで文章を発表している。 崎山伸夫氏(撮影:三田典玄) いずれの講演者も、以下の問題を指摘している。 1.「法規制」というかたちでこれらの規制がされる必要があるのか? 2.「法規制」とするための弊害のほうがネット情報の流通にとっては問題なのではないか 3.日本は諸外国と比べても比較的「民度」の高い国である。 4.「有害情報」などはその基準が曖昧(あいまい)である などの問題があることが指摘された。このことを考えると、法律は現行法で十分であろう、というのが発表者の多数意見であった。 特に久保田氏は、小学校、中学校の子供たちでさえ、それぞれの立場でこれらの問題を自分たちで認識している例を多く見る現状では、法律は新たに必要ない、としている。 久保田裕氏(撮影:三田典玄) 記者がこれらの講演を聞いて思ったのは、ここに集う講演者の共通の主張である「ネット法規制は必要ない」という主張には、かなりの説得力がある、ということだ。実際、自動でフィルタリングをされるとしても、親の負担は非常に大きくなり、その運用に多大なコストがかかることは目に見えている。 また、ネットの「有害情報」と「違法な情報」はひとつに語られることが多いが、実際には、この2つは全くの別ものであることは論を待たない。「違法」は要するに現行法のもと、明らかに「違法」とされるもので、これは現行法での規制で十分であることは言うまでもない。 小寺信良氏(撮影:三田典玄) 記者としては、MIAUの言う「ネットの法規制は必要ない」という意見には賛同するが、それは、民間でのネットのスキルとモラルをさらにあげていく努力があってのことであり、それは日本にいる企業、日本の国民のほとんどがそれをできるだろうと思っているが、いかがだろうか? 【編集部注】本文の一部を修正しました(2008/5/2 10:03)
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