地裁所長襲撃、成人2人無罪確定へ 大阪高検が上告断念2008年05月01日03時03分 大阪市住吉区で04年、当時の大阪地裁所長(65)が現金を奪われて重傷を負った事件で強盗致傷の罪に問われ、一、二審で無罪とされた会社員ソウ敦史(ソウは専の寸が日)被告(33)と同、岡本太志被告(30)について、大阪高検は上告を断念する方針を固めた。上告は原則として下級審の判断に憲法違反や判例違反がある場合に限られ、「上告理由が見当たらない」と判断したとみられる。上告期限の1日いっぱいで、2人の無罪が確定する見通しだ。 事件ではほかに少年3人が逮捕・補導された。当時14歳の少年(19)と、同16歳の元少年(21)については少年審判で「無罪」や「再審無罪」にあたる判断が示されたが、検察側が争う姿勢を崩していないため、司法手続きがなお続いている。今回2人の無罪が確定することが少年らの審理に影響を与えるのは確実とみられ、「全員無罪」とされる見通しが強まった。 大阪高裁が4月17日に言い渡した判決は、実行犯の1人で被害者に体当たりしたとされた当時13歳の少年(18)について犯行時間帯にアリバイが成立すると明確に認定。さらに、2人の指示で、当時13歳の少年とともに犯行に及んだ――とする同14歳の少年と同16歳の元少年の捜査段階の自白についても、一定の信用性を認めたうえで、同13歳の少年のアリバイと矛盾することなどから「証明力は相当に減殺される」と指摘。2人を無罪とする判断を導いた。 上告理由は刑事訴訟法で憲法違反と判例違反に限られる。ただし「重大な事実誤認」や「量刑が甚だしく不当」などの事情があれば、最高裁は職権で下級審判決を破棄できる。このため、「経験則や論理則に反する認定をした」として上告する例もある。 今回の高裁判決について検察側はこうした検討も行った結果、(1)アリバイ成立の認定はメールの送受信記録や知人少女の証言など複数の証拠に支えられている(2)一審判決とは逆に、少年らの「自白」の信用性を一定程度認めており、取調官の示唆や誘導は認定していない――などの点を踏まえて「重大な事実誤認があるとまではいえない」との結論に至ったとみられる。 当時14歳の少年と同16歳の元少年は昨年12月と今年2月、大阪家裁でそれぞれ刑事裁判の「無罪」と「再審無罪」にあたる決定を受けたが、いずれも大阪高裁が検察側の抗告を受理。同14歳の少年については「審理が不十分」との理由で「無罪」の決定を取り消し、再び家裁へ審理を差し戻したため、少年側が最高裁へ再抗告している。 児童相談所に通告された当時13歳の少年も昨年4月、「虚偽の自白を強要された」として、国や大阪府に賠償を求めて提訴している。 PR情報この記事の関連情報社会
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