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この週刊誌がすごい

年寄りよ、早くくたばれ!が政治家と官僚の本音

この週刊誌がすごい71

元木 昌彦(2008-05-01 19:30)
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 今週は、現代、ポスト、フラッシュ、朝日などが合併号になる。どの週刊誌も、福田総理のリーダーシップのなさへの批判しきりだが、やはり、後期高齢者に対する医療費問題は、読めば読むほど、怒りがわいてきて仕方ない。

 ポストの「後期高齢者の終末医療『延命やめたら医師にお手当て2千円』」は読みながら震えてきた。

 「福田首相が名称変更を指示した『長寿医療制度』の実態は、後期高齢者にまず人間ドックを“禁止”して病気の発見を遅らせ、通院患者は『月6000円』までで治療は打ち切り。入院患者は退院させ、終末期患者は延命しない。そうすれば医療機関の診療報酬をどんどん加算させるという、まさに高齢者を死に追いやる徹底した制度なのである」         

 この後期高齢者医療制度の真のターゲットは、団塊世代やポスト団塊なのだという。厚生労働省は、今後5年間で、病院のベッド数を25万床から15万床へ削減する。ベッドの上でも家でも死ねない、医療難民が、2030年には47万人にも上るというのだ。福田もあと数年で後期高齢者になる。二代目のバカボンには、庶民の痛みに対する思いやりなど欠片もないのだろうが、小沢にもあるとは思えない。年寄りよ、早くくたばれ!がこの国の厚生官僚と政治家どもの本音なのだ。

 週刊女性の「泰葉 蹴ちらされた!『小朝の女』は超近距離」がおもしろい。19年間連れ添った小朝と泰葉が別れて5ヶ月。泰葉に、小朝には多くの彼女がいたことがわかってきたというのだが、そのほとんどが「半径数メートル」以内で、小朝のマネジャーや付き人ばかりなのだ。笑える。

 朝日に、光市母子殺人事件の弁護人、安田好弘弁護士が「強制執行妨害容疑」で逮捕された裁判で、一審は無罪になったのに、東京高裁は、一審判決を破棄して、有罪にしてしまった。ジャーナリストの魚住昭氏が怒りを込めてレポートしている。その判決も、弁護士資格を剥奪されないような奇妙な罰金刑で、きわめて政治的なものであるとしている。

 安田弁護士は、死刑廃止やオウム教団への破防法適用問題などで、法務・検察と鋭く対決してきた。その目障りな安田弁護士を葬ろうと、捜査当局は、「事実」を無視して容疑をでっち上げたのだが、一審では、完全無罪を勝ち取った。

 日本の裁判では99.9%が有罪判決なのだが、中でも、検察が異議を申し立てると控訴審で多くが無罪を覆されるという。魚住氏は「東京高裁では検事控訴の80%が逆転有罪・厳罰化されるという統計上の数字がある」と書く。

 光市母子殺人事件の控訴審判決が出るまでの弁護団に対するバッシング報道は、この国のメディアの未熟を露呈させてしまった。また、この国の民の多くが、報道に煽られると、集団ヒステリー症状になって「怖さ」も見せつけた。

 そうした空気を読んで、今なら、安田弁護士への有罪判決も受け入れられると、最高裁や検察の鼻息ばかりをうかがう裁判官が出した判決だと魚住氏は推察する。確かに、司法の危機は、由々しきところまできている。こんな時、裁判員制度を始めれば、どんな恐ろしいことになるか。

 月刊誌だが論座「『靖国』騒動への疑問」の中の、上野千鶴子さんの論文「『自主規制』という名のファシズム」が必読。のっけから「この国に『言論の自由』はない」で始まり、言論の自由が抑圧され、奪われていることを具体例として挙げて書き、最後にこう結ぶ。

「権力にとってノイズになる情報はシャットアウトし、情報を『自主的に』一色に変えていく……これをファシズムと言わずして何だろうか」

 この危険な時代に、大声で警鐘を鳴らすことこそ週刊誌本来の役割ではないか。怒りを忘れ、権力と対峙することを放棄してしまった週刊誌など、新聞テレビと同じではないか。

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