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随筆家の岡部伊都子さん死去

2008年04月29日

 暮らしに息づく日本の伝統美をこまやかにつづった随筆家の岡部伊都子(おかべ・いつこ)さんが29日午前3時59分、肝臓がんによる呼吸不全で死去した。85歳だった。葬儀は近親者のみで行う。「お別れ会」は5月31日午後2時から京都市上京区寺町通丸太町上ル松蔭町141の2の洛陽教会で。連絡先はギャラリーヒルゲート(075・231・3702)。

写真岡部伊都子さん

 大阪市の生まれ。婚約者を沖縄戦で失った後、1946年に結婚したが離婚。破産した実家に戻るなど苦労を重ねた。

 54年から放送された朝日放送のラジオエッセーをまとめた「おむすびの味」で随筆家として名を得た。独特のやわらかい筆づかいで美の世界を追求し、戦争、差別などを鋭く批判。著書は「沖縄からの出発」など100冊を超える。96年の著作選集「岡部伊都子集」(岩波書店)は、愛読者でもある作家の落合恵子さんと評論家の佐高信さんが企画・編集を担当した。

 「学歴はないけど病歴はある」と自らを評したほど、幼少時代から病気と闘いつづけた。療養生活を続ける中で、弱者や美しいものへのまなざしを養った。01年に肝臓がんの宣告を受けた。05年2月、約30年住んだ京都・賀茂川べりの家からJR京都駅近くのマンションへ転居。蔵書は図書館に寄贈し、思い出の品も整理した。「死に支度や」と話していた。

 06年、自伝「遺言のつもりで」を出版。この本で、自らの最期を見つめるこんな境地を表現した。「死ぬまで、自分を育て、解放されなければ。これで終わりということがない。毎日が始まりや。刻々の誕生や」

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