沖縄ジュゴン訴訟/米提出の報告書「ずさんすぎる」
米国の「沖縄ジュゴン訴訟」で、米国防総省は二十四日、米サンフランシスコの連邦地裁にジュゴンへ配慮するための情報をまとめた報告書を提出した。ただ中身はジュゴンの生態、文化的価値など項目の列挙と、日本政府の環境アセス方法書の抜粋で、具体策は示されなかった。国防総省の報告書について、環境アセスに詳しい桜井国俊沖縄大学学長が分析した。
裁判の中で、米国は基地建設とジュゴン保護に「責任がある」と認定されている。だが国防総省の報告書には当事者意識がなく、日本政府の情報を中心に「配慮する」姿勢を示しているだけで、あまりにもずさんだ。
日本のアセス方法書抜粋も、重要情報を開示せず三度も出し直した経緯には一切触れず、体裁だけ整っていると書いているにすぎない。
内容を吟味していないのは明らかだ。
アセス方法書は、辺野古だけでなく、県全体のジュゴンの個体群維持への影響を予測・評価する、としているが、現在のところ雌雄の頭数、繁殖行動と出産割合、縄張りなど、ほとんど分かっていない。複数年調査さえ明記しない方法書は、空理空論だと言わざるを得ない。
国防総省報告書は、環境面より「歴史・文化的重要性」の評価を強調している。環境問題から論点をすり替えようという側面もあるのではないか。(談)