第六章:女子社員教育ほど難しいものはない | ||||
マンツーマンで誉めちぎる | ||||
ここまでは、企業の主戦力となる男子社員の教育法を述べてきた。しかし、中小企業の場合、女子社員といえども、男子社員とは若干違ったニュアンスではあるものの、戦力として考えざるを得ない。 しかし、女子社員の教育はむつかしい。正直いって男子社員より数倍むつかしいのではないかと思う。教育次第によっては、仕事に対する熱意は男子社員を上まわることにもなるし、一歩誤れば、そのことごとくで男子社員の足を引っぱりかねない。 我社の女子社員の比率は、三〇%程度であるが、彼女たちは実によくやってくれている。朝、定刻より一時間早く出勤してくることは先に記したが、上司が放っておくと十時、十一時まで仕事をしてくれる女子社員もいる。それが、年に一度か二度というやむを得ない事情がある時なら別だが、毎日となれば、帰宅途中のことなどもあって困ってしまうので頼んで帰ってもらっている状況だ。 それはさておき、女子社員を育てるには、やはり高度なノウハウが必要である。 男子社員の場合は、叱って、怒鳴りつけて、ボロクソにこきおろしても、闘争心や反発心を植えつけることにもなるが、この方法は女子社員には全く通用しない。やり方は全然逆である。誉めて誉めて誉めちぎらなければならない。 その誉め方も、彼女たちにはすぐに慢性化してしまう。だから、「また同じことを言ってるわ」という誉め方ではダメだ。そのためには、非常に細かなことも見逃してはならない。 以前にはできなかった仕事ができるようになったとか、仕事のペースがごくごくわずかでも速くなったとか、電話の応対、言葉づかい、お茶の入れ方ひとつでも誉める対象である。もちろん普段から十分に注意して、ファッション、髪型、化粧法といったどんな小さな変化も見過ごしてはいけない。これらの一つひとつがすべて誉める対象になるのだ。 以上のことは、女子社員全員に平等にやらなければならない。男と違って、女子社員のうちの一人だけを誉めると、嫉妬の対象となる。極端にいえば、何でもない言葉をかけるにしても、その回数まで平等というのが鉄則である。 こうしたわずらわしさをわずらわしさと考えては、女子社員の教育はできない。見えるところでは、完璧に平等に扱わなければならない。 では、どのようにして誉めるか。叱る場合もそうだが、みんなの見ている前でやってはいけない。すべてマンツーマン、つまり一対一でやる。そして、「こんなこと言うのは君だけやで」とこう言う。 男子社員の場合は、このように言うと、かえって逆に、「俺、今日こんなことを言われた」「何やお前もか」と広まってしまうが、女子社員の場合は全くと言っていいほど漏れることはない。 ともかく、マンツーマンで誉めちぎる―女子社員が喜んで、仕事に対する意欲をわきたたせてくれる第一の要因である。 ※本書は1984年にPHP研究所より刊行されたもので、内容は当時のまま掲載しております。 次回更新日:2007.8.1 |