東京都渋谷区の会社員、三橋(みはし)祐輔さん(当時30歳)を殺害し切断した遺体を捨てたとして、殺人や死体損壊などの罪に問われた妻歌織被告(33)に対し、東京地裁は28日、「あまりに残酷で無残な犯行」として懲役15年(求刑・懲役20年)を言い渡した。公判では鑑定医2人がともに「事件当時は心神喪失状態だった」と報告していたが、判決は歌織被告の完全責任能力を認めた。
河本雅也裁判長は、事件当時の歌織被告の精神状態について「意識障害を伴うもうろう状態や幻視、幻聴状態に陥り、適切な行動の抑制が困難な状態にあった」と、鑑定の信用性を認めた。その一方で(1)犯行時は一定の運動能力と意識の清明さを保っていた(2)発覚を防ぐための工作をしている--などの理由から「精神の障害は責任能力に問題を生じさせる程度ではなかった」と結論付けた。
そのうえで「数々の犯行隠ぺい行為を繰り返し、遺族の気持ちを踏みにじる卑劣で自己中心的な行為だ」と非難した。しかし「夫から暴行を受け続けながら、夫は離婚の求めにも応じず、精神的にも追いつめられ、地獄のような夫婦生活を送っていた。同情の余地が相当ある」と述べた。
判決によると、歌織被告は「夫から逃れたい。この生活を終わらせたい」などと考え、とっさに殺意を抱き、06年12月、自宅マンションで寝ていた祐輔さんの頭をワインボトルで殴って殺害。遺体をのこぎりで切断して、新宿区の路上などに捨てた。【伊藤一郎】
毎日新聞 2008年4月28日 10時15分(最終更新 4月28日 11時14分)