新基地建設は不要/県内大学教授らがシンポ
シンポジウム「押しつけられた常識を覆す―安保・開発・環境の視点から」(主催・「いまこそ発想の転換を!」実行委員会)が二十七日、那覇市の県立博物館・美術館で開かれた。県内の大学教授三氏が登壇し、名護市のキャンプ・シュワブ沿岸部で進む米軍普天間飛行場の代替施設建設に反対した。
実行委員長の宮里政玄沖縄対外問題研究会代表は「辺野古の新基地は大きな問題を抱えているが、十分な検討がされていない。沖縄は危機的状況」と懸念。沖縄の基地、振興開発問題について“政府の世界観”ではない新たな視点で討論することを呼び掛けた。
「沖縄に新基地は不要」をテーマに報告した我部政明氏(琉大教授)は、沖縄の海兵隊の戦略的重要性はなくなったと指摘。在日米軍が一九九六年に作成した「普天間飛行場の嘉手納基地への統合に関する実現可能性についての技術評価書」を提示し、「米側の論理に沿っても、沖縄の海兵隊が必要というのは、SACO(日米特別行動委員会)最終報告前の話となった。嘉手納を補完する役割としての普天間はいらなくなった」として代替施設不要論を説いた。
「振興開発は経済と自治を破壊する」と報告したのは島袋純氏(琉大教授)。「高率補助システムの振興開発制度は、日本の保守利益還元政治に沖縄を組み込むものだった」と述べ、高率補助により沖縄の自治は脆弱化したと指摘した。
会場からは「経済が自立すれば豊かになるというのが今までの常識だった」という問いがあったが、「それの逆。政治的自立があって豊かになる」との持論を展開。イギリスのマン島、フランスのコルシカ島、マルタを例に、政治的自治強化の必要性を唱えた。
桜井国俊氏(沖大学長)は「辺野古新基地は沖縄の未来を奪う」をテーマに、持続可能な開発の重要性を強調。「代替施設建設のため、沖縄で年間採取量の十二倍に当たる千七百万立方メートルの海砂が取られれば、観光も成り立たなくなる」と訴えた。
海砂採取や構造物建設で海流が変化する例が少なくないことを指摘しながら、「環境の視点から見た沖縄の生態系状態はカタストロフィー(破局)に近い。新基地建設を許せば海がなくなり、沖縄は生きていく基盤を失う」と危惧した。
フロアから「次は経済学者も入れて、徹底的に議論して知恵を集めてほしい」などの声が上がった。