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世界が注目!長野聖火リレー

聖火の長野に現れた醜い「ニセモノ」

チベット人の足を引っ張るな!

藤倉 善郎(2008-04-27 06:00)
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 26日、長野市で行われた聖火リレーのスタート前に見かけた「チベット側支援者」の小競り合いには、現場で取材していて、ある不自然さを感じた。というのも、その場の「チベット側支援者」の言葉や態度が、これまでオーマイニュースでリポートされてきたチベット人のデモ行進や関係者の発言とは、明らかに違ったのだ。

 日中、聖火リレーの動向を取材しつつも、その違和感が頭から離れなかった。取材終了後、記者(藤倉)と別行動でチベット人グループを取材していた橋爪明日香記者を通じて、その点を確認してみた。すると、どうやらチベットの旗を掲げチベット人を応援しながらも、チベット人グループとは異なるスタンスで行動する“似非(えせ)チベット”の日本人が、相当数いたらしいことがわかった。
チベットの旗を掲げチベット人を応援しながらも、チベット人グループとは異なるスタンスで行動する“似非チベット”の日本人が、相当数いたらしい=26日、長野市内の若里公園で(撮影:吉川忠行)
スタート時にチベット人はいなかった?

 「中国人を“挑発”したチベット側支援者」に書いたとおり、聖火リレーのスタート地点である長野市の勤労者福祉センター跡地前の沿道には、スタートの2時間以上前から多くの中国人が詰め掛けていた。このとき、中国人グループより遅れてチベットの旗を掲げた一団が現れた。

26日朝、聖火リレーのスタート地点で中国人や警官ともみ合う「チベット支援」の日本人ら=長野市・勤労者福祉センター跡地前で(撮影:吉川忠行)
 スタート地点でチベットの旗を掲げていたのは、この一団だけある。数十メートル離れた場所で1人だけ、中国人集団の真ん中でチベットの旗を振っていた男性もいたが、彼はすぐに警官に移動させられてしまっていた。

 この一団の1人は地元マスコミの取材に対して、自分たちは全員日本人であると説明していた。彼らは、聖火リレーがスタートする午前8時半まで、この場にとどまっていた。

スタート地点でチベット旗を掲げていたのはこの一団だけ=26日朝、長野市・勤労者福祉センター跡地前で(撮影:吉川忠行)
 チベット人と、これまで彼らを支援してきた日本のグループは、ほぼ全員が8時15分から善光寺で行われた法要に出席している。この点は、橋爪記者自身が、取材を通して確認している。つまり、スタート地点でチベット旗を掲げて騒いでいたのは、チベット人でないどころか、チベット人を支援してきた日本人グループですらない可能性が高いのだ。

中国人を挑発する「チベット支援者」

 スタート地点にいたチベット側支援者たちは、中国人に向かって「帰れ!」「虐殺糾弾!」など、強い調子で非難の言葉を吐いていた。「帰れ」という言葉が、ここでの小競り合いの原因にもなっている。しかし、これまでオーマイニュースでリポートされてきたチベット人のデモなどには、これほどの攻撃性が感じられなかった。ただひたすら「フリーチベット」とコールしているだけで、中国への非難や恨みをモチベーションに活動しているといった印象をまったく受けなかった。

 これまでチベット問題を直接取材している橋爪記者に尋ねると、やはり「これまでのチベット支援者の印象とは違う」という。橋爪記者を通じて、SFT日本(Students for Free TIBET Japan)のドルツェ代表ら在日チベット人をサポートしていた高橋明美さんらに、その点を尋ねてもらった。

橋爪記者 「一部の日本人がチベットの国旗を掲げて、『中国は出て行け』などの主張をしていたり中国人を挑発したりして、こぜりあいになっていたんですが(その動画はこちら)、チベット人を支援する立場から見て、いかがですか?」

高橋さん 「そんなことがあったんですか。私たちは決して暴力的なことはしません。『チベットに自由を、宗教の自由を、教育の自由を、本当の自由を、フリーチベット!フリーチベット!』と言っていました」

在日チベット人・カルデンさん 「暴力的な抗議活動をするのは、基本的には良くないと思います。我々チベット人は平和的な抗議活動をするのが一番の望みなんです。何か我慢できなかったというのもあったかもしれないので、その人たちを悪いとか私も言いたくはありません。ただ、ちょっと残念なことじゃないかなと思います」

笑いながら中国人に「帰れ!」と叫ぶ

 チベット旗を掲げて行動していた人々の中には、たとえば「支那人たちに厳命する」などと書かかれた看板を掲げた人もいた。チベット人グループとともに行動していた理由について、メディア記者らを前に「単純に中国が嫌いなだけだ!」と言い放った男性すらいた(その動画はこちら)。

「支那人留学生たちに厳命する」「凶産支那」などと書かれた看板や旗を持つ人の姿も=26日、長野市内の若里公園で(撮影:吉川忠行)
 記者がスタート地点で見かけた一団は、中国人に向けて「帰れ!」「糾弾!」と叫びつつも、笑顔だった。まるで“市民運動的なパフォーマンス”を趣味にしている人々のようにさえ見えた。

 聖火リレーの終着地点では、雨の中、関係者の話に聞き入っているチベット人と支援グループが多い中、その場から離れてのんびり雨宿りを始めた一団もあった。彼らは、自分たちがもみ合った際の中国人の様子を、大声で楽しそうに日本語で話していた。

 いずれも、記者会見などで「平和的で合法的な活動をする」と語ってきた物静かなチベット人グループとは、まったく違う態度の人々。これは“似非チベット”だ。

聖火リレーの騒動は“似非チベット”vs中国人?

それぞれがそれぞれの思いで「フリーチベット」を唱えていた=26日、長野市内の若里公園で(撮影:吉川忠行)
 チベット人グループと主張が違っていたとしても、チベット旗を掲げ、「フリーチベット」を唱えていた以上、チベット人を支援する意思はあるのだろう。しかし、果たして彼らの存在はチベット人のためになるのだろうか。

 むしろ彼らの行動や態度が、「似非チベットvs中国人」のトラブルを「チベット人vs中国人」であるかのようにメディアや世間に見せつけ、チベット人の足を引っ張ることになりはしないか。

 今回の聖火リレー騒動では、長野市が北京に見えてしまうほどの中国人の動員力と統率力に驚かされ、チベット人グループのまじめで悲痛な訴えにシンパシーを感じた。しかし同時に、“似非チベット”の醜さも見せつけられたイベントでもあったように思う。


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