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司法解剖の遅い開示が医療訴訟の一因 法医学学会で報告

2008年04月27日10時25分

 医療ミスの疑いがあると、捜査目的で司法解剖が行われるが、6割以上の遺族では結果を知るまでに2年以上かかり、その情報開示の遅れから医療訴訟につながっていることが、東京大大学院の伊藤貴子特別研究員(法医学)らの調査で明らかになった。長崎市で開かれた日本法医学会で発表された。

 司法解剖は、犯罪捜査を目的に検察庁や警察が依頼する。原則として捜査が終わるまで解剖結果は遺族に示されない。伊藤研究員らは、医療事故を扱う全国弁護団組織などの協力を得て248遺族にアンケートを送り、89遺族から回答を得た。26遺族が司法解剖を、20遺族は病院側による病理解剖を経験していた。

 集計によると、解剖結果を知るまでの期間は、司法解剖では、2〜4年が54%、4年以上が8%を占め、半年以内にすべての遺族が結果を知った病理解剖に比べて開示までの長さが際だっていた。

 その間に、過失の有無を知りたいと強く望む遺族が次第に増え、解剖結果の説明を求めて警察への開示要求や弁護士相談などを試みていた。また解剖経験遺族の54%が「死因について納得できる説明があれば訴訟をしなかった」と答えるなど、開示の遅れが不信を招き、医療訴訟が増える原因となっていた。

 調査を指導した吉田謙一教授は「司法解剖の結果を早く開示することは、類似事故の再発予防など社会的にも極めて重要なのに、貴重な情報が医療現場に還元されずに埋もれ、紛争を促進する結果さえ招いている」としている。(林義則)

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