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北京五輪:騒然、長野リレー 笑顔なき聖火--警備3000人、3人逮捕

 チベット人権問題への中国政府の対応を巡り、世界各地で混乱が起きた北京五輪の聖火リレーが26日、長野市の全長約18・7キロのコースで行われた。リレーを盛り上げようと早朝から集結した中国人留学生らと、右翼やチベット支援者らが市内各所で小競り合いを繰り返し、中国人4人が軽傷を負い、走者の前に飛び出した男3人が逮捕されるなどトラブルが相次いだ。「中国 加油(ジアヨウ)(頑張れ)」と「フリー チベット(チベットに自由を)」の叫び声が交錯する中、警官約90人に守られた聖火リレーは「市民不在」のまま終了した。

 午前8時15分、出発地を返上した善光寺から約800メートル南西の県勤労者福祉センター跡地で出発式。竹田恒和・日本オリンピック委員会(JOC)会長が「長野市から日本中の人々に平和と友情のメッセージが伝わることを確信している」とあいさつした。聖火リレー市実行委員会名誉副会長の鷲沢正一・長野市長が「相互理解と友好の精神を絶やさない五輪精神を長野から全世界に伝えたい」と述べ、世界人権宣言の第1章を朗読した。

 同26分、鷲沢市長から北京五輪野球日本代表の星野仙一監督(61)にトーチが渡され、聖火リレーはスタートした。紅白のTシャツと短パン姿の星野監督は右手で聖火を高々と掲げ、笑顔で沿道の中国人らに手を振りながら約240メートルを走り、アテネ五輪陸上男子短距離代表の末続慎吾選手(27)に手渡した。

 午前8時47分ごろ、10番目に走ったタレントで長野五輪閉会式司会を務めた萩本欽一さん(66)がJR長野駅前を通過中、沿道から男がビラなどを2回投げつけ、伴走の警官が盾で防いだ。その際、警官の列に飛び込んだ男が威力業務妨害容疑で逮捕された。同9時過ぎには19番目の北京五輪卓球日本代表、福原愛選手(19)の前に飛び出したチベットの旗を持った台湾籍の男、同11時10分ごろには市民走者に向け生卵を投げた日本人の男が同容疑で逮捕された。

 負傷者も相次ぎ、午前6時55分ごろ、長野市中越のリレーコース付近で、中国人男性が右翼活動家とみられる男に旗で殴られ額を切るなど、中国人計4人が軽傷を負った。

 80番目のアンカー、アテネ五輪マラソン金メダリストの野口みずき選手(29)にリレーされた聖火は午後0時半、終着点の若里公園に到着。野口選手が聖火台に火を移した後、到着式典が行われた。

 警察庁と長野県警は近隣県警などを含む約3000人の警官を動員。石井隆之・県警本部長自らが伴走車で陣頭指揮を執った。白バイが先導、機動隊員5人と、北京五輪組織委が派遣した聖火警備隊の2人が伴走。周りを白いトレーニングウエアと制服姿の警官約90人が取り囲みながら併走した。出発・到着式会場は五輪関係者以外の入場が制限された。【藤原章博】

 ◇思い達成できず--萩本さん

 ◇すんなり走れた--星野さん

 ビラなどが投げ込まれる混乱に遭ったタレントの萩本欽一さん(66)は「ハッピーな気分で終わりたかったのに。そんな空気に浸ることもなく、思いが達成できなかった」と無念そうに話した。

 萩本さんが走った長野駅前は、リレー開始前から中国人とチベット支持派が衝突し、「ここはイヤだな」と思っていたという。ビラなどの投げ込みには気づかなかったが、警官が「位置につけ」と叫ぶ声が聞こえ、伴走の警官が一斉に歩道を向いて構えたり、盾を持って近寄ってくるのを目の当たりにした。

 萩本さんは「沿道も見えず悔しかった。子供やおばちゃんたちと、ハイタッチしようと思ったんだけど……。もう一度、トーチを持って街の中を走ってから帰りたい」と話した。

 第1走者を務めた野球日本代表の星野仙一監督(61)は「すんなり走れてよかった。沿道も皆、笑顔で声援してくれた」と、自身は順調だったことを強調。後続区間での混乱について問われると「私は自分の任されたことをきちっとやるだけ」とコメントを避けた。【石井朗生】

毎日新聞 2008年4月26日 東京夕刊

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