▼ SE-U55SXの電源と出力ノイズの謎
■本体内部からノイズ音
基本的には高音質なSE-U55SXですが、いくつか謎があります。
- 付属ACアダプタで使用時、回路内部から「キーーン」という発振音がする。
- 直流定電圧源で調べてみると、+5Vをほんの少しでも割り込むと発振音がひどくなる。
- このとき録音機能はこの発振音に同期したノイズだらけで(付属ACアダプタ使用)、再生でも同期したノイズが入ることがある(直流定電圧源使用)。
これは明らかにDC-DCがおかしい。オペアンプの電源は、各部位ですべてCRフィルタ(47Ω+220uF程度)されているのに、それでもノイズが残っていることも不思議でした。
■電源回路に問題あり
調べてみるとアナログの正負電源回路に問題があることが分かりました。
回路写真 | +9V | -9V |
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正負電源はDC-DCコンバータで生成しているのですが、2次側(出力側)にまともな平滑コンデンサが付いていません*1。そのせいで、出力側に激しいノイズが表れています。当然です。DC-DCの2次側にコンデンサを付けないなんてアマチュアでもしない失敗です。こんな状態でまともにDC-DCが動くはずがありません。*2
回路をよくよく見てみると、実は1次側(電源側)にも、2次側(生成電圧側)にも電解コンデンサを付けるパターンが切ってあります。
形状からしてチップタンタルコンデンサを付けるためのものだと思いますが、それが付いていません。考えられる原因は1つコストダウンです。結構コストの高い部品やらを使っていますから、実売2万円以下にするため量産段階になってあれこれ削った可能性があります。
しかし、代わりにチップ積セラの10uF、せめて1uFでも付いていればさして問題はないものを単純に取ってしまうあたり設計者じゃない誰かの仕業に思えます。パターンを追っていくと他にも空きランドやら疑わしい部分があり、まだ何か出てきそうです。
たまたま当たりを引いたという考えも過ぎりましたが、この記事の写真にも乗ってませんから意図的なもののようです(ここにもなし)。しかしこれ、リコールしても不思議じゃない欠陥だと思うですが……。*3
*1 : 裏面に0.1uF(?)の積セラが3つだけ付いてますが容量が足りません
*2 : Lを介してニチコンの巨大コンデンサに繋がっていますが、Lの手前にコンデンサがないのでDC-DC回路が安定しません。
*3 : 個体差で今は問題なく動いてたとしても、この状態はDC-DC回路におそろしく負荷かかります。ACアダプタにしても電圧誤差±5%は普通あるものですが-5%ではまともに動作しません。ほんとこれじゃあ回路設計者が可哀想です。
■電源問題を解決する
回路上の C973/C974 に電解コンデンサを付けます。タンタルコンデンサが良いですが、秋月で売っている 10V 耐圧は(大丈夫だけども)ちょっと心配です*4。
おすすめは低ESRコンデンサ*5で、耐圧16V、容量は10uF程度*6。スイッチングノイズを取ることが重要なので大容量品は要りません(むしろ大容量品では充電電流が不足し逆にノイズが増えます(特に負電源))。低ESR品がなくても標準品コンデンサでいいから付けておいた方が100倍良いです。
C977/C978の一次側も付けた方がよいです。6.3V以上、容量は47uFか100uFぐらいを目安に。一応なくても安定動作しますが、あった方がノイズは少なくなるのでつけて置いた方が良いです(±9Vラインの他、5Vラインのノイズも低減します)。ここも低ESRコンデンサがよいです。
*4 : 昇圧回路にあまりギリギリの定格は使わない方がいい。しかもタンタルはショートモードで壊れるので
*5 : OS-CONや導電性高分子コンデンサ等。PC向け低ESRも可ですが前者の方が性能が良いです。
*6 : 過渡状態で大きな電圧が発生することがあるため良くはないのですが、壊れたら諦める or 直す覚悟があれば10Vで済ませるのも手です。
■改善後
+9V | +9V | 9VのAC成分のみ |
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LINE OUT(改善前) | LINE OUT(改善後) | |
手持ちに低ESR品がなかったので、なぜかこの基板から取り外したTK 25V 47uFを2次側に付けてみました。電源のノイズが綺麗になっています。AC成分だけみるとまだノイズが残っていますが、DC-DC昇圧式電源なので完全に除くことは難しいです。*7効果は明かで録音ノイズが減り、電源電圧の変動に対しても安定になりました。
注目すべきはLINE OUTは出力開放時のノイズレベルです。可聴域外ノイズとはいえ、もとの状態ではアンプや再生音に悪影響があることは明かです。改善後はかなりまともになっています(DC-DCなので完全にノイズを消すのは困難です)。
コンデンサやオペアンプを載せ替えてる暇があったらまずここを直しましょうね。
*7 : あとで低ESR品に取り替えて、1次側にも電解コンも付ける予定。
■(追加)表面実装へのDIPの載せ方
表面実装パターンへのラジアルリードコンデンサの載せ方です。当たり前ですが、本来ならこういう部品の載せ方はすべきではありません(注意:この画像は他の基板を使っています)。
1 | 2 | 3 | 4 |
- 載せたい場所です。
- まずハンダを盛ります。
- コンデンサの足を曲げます。隣のパターンや2本の足が接さないように十分に注意します。
- 盛ってあるハンダに手早く付けます。隣のパターンなどと接しないように充分に注意します。
本来ハンダに機械的強度を期待してはいけないのですが、ハンダを十分に盛らなかったり、コンデンサの足がハンダに埋もれるぐらいに付いていないと、機械的強度不足により外れたりして最悪の場合故障の原因となります。しっかり付いていた場合、部品に無理な力がかかるとパターンごと剥がれるなどの故障の原因となります。当方は一切責任は取れません、あしからず。
不安な方は無理をせず、素直にチップタンタルやチップセラミックの10uF程度を付けましょう。
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SE-U55SXの音質改善(コンデンサ交換)
nabeの雑記帳 みなさんお待ちかね(?)のコンデンサ載せ替えです。お約束ですが、この記事を参考にする場合はすべて自己責任でお願いします。著者は一切の責任を負いかねます。 回路構成とコンデンサの役割 効果が高いと思われる順 カップリングコンデンサ エージング ADC...
# F 2007年12月17日(月) 午後5時31分
再びすみません
昨日コンデンサーが着き交換しようとしましたら半田がなかなかとけませんorz 一個はやや溶けたのでたぶん出力の問題ではない(普通に鉛フリーのが溶けます)かと思いますがだいたいどのくらいで溶けるものなのでしょうか?溶けないのは10分付けても溶けませんでした・・・ それとこのDC-DCのってもしかして表面実装?(=裏に穴がないのでしょうか?) 裏から見てもどうもわからないし、溶かしても下に進まないので・・・
何度もすみませんがお願いしますm(__)m
# なべ 2007年12月17日(月) 午後10時23分
表面実装ですよ(^^;;
一応書き足しておきましたが、既に10分も熱したとなるとパターンの裏が焦げてはげかかってるかも知れませんから、その場合はこの付け方は危険かもしれません。
# F 2007年12月17日(月) 深夜1時31分
なかなかやばい状況だったんですね(^^;;(現在は一応動いてますが・・・)
では足をまげて上から半田付けしようと思います
# T.K 2007年12月22日(土) 午後2時27分
これ、ただの製造での実装ミス(部品欠品)ですよね?
不良品だと思うのですが、如何でしょうか?
# なべ 2007年12月22日(土) 午後8時27分
さすがにこれだけハデなミスなら出荷前に気づかないわけないでしょう(^^
事情はともかく意図的なものでしょう。
# 通s 2008年02月18日(月) 午後9時48分
普通はパターン設計のデータに部品のマウント位置データが乗ってます。おそらく回路図上のどの部品かの情報も含まれているでしょう。実装会社での間違いはまずあり得ないです。性能テストで許容範囲という判断が下ったのでしょう。
ちなみにその画像に使っている基板はパターン設計が下手だと思います。ベタ側はGNDと思われるがこれではリフロー時に熱が逃げて半田不良にやりやすいし、もし電源のパスコンならもう少し見た目だけでも一点アース風にするべきでしょう。(見た目がパスコン経由でVccとGND)
# なべ 2008年02月19日(火) 午後9時31分
(ACアダプタの電圧の誤差もあって)自分の買ったものはお粗末な性能でしたけどね。
パターンってDC-DCの部分ですか? あのパターンはベタアースで、Lにつながる方だけVcc/Vddになってます。全体はこんな感じ。
http://nabe.blog.abk.nu/SE-U55SX%ca%ac%b2%f2%a5%ec%a5%dd%a1%bc%a5%c8
DACだけ気合い入れて並べてあとはなーって感じですね。個人的にはデジタル/アナログ分離をもっと徹底して欲しかったところです。