ここ数年で、携帯電話の各種機能は飛躍的に向上し、今や、どのキャリア、どのメーカーでもほぼ十分な機能性を持つようになった。高性能カメラをはじめ、ワンセグチューナーや音楽プレーヤー、GPS機能におサイフケータイなど、キャリアを問わず、最新モデルではほとんどがこうした機能を搭載しており、もはやキャリア間での携帯電話の機能差はほとんどなくなったといっていいだろう。ここ最近発売された新機種を見ても、特にこれといった新しい機能は出ておらず、機能的にはすでに頭打ちの時代に入ったと見ることもできる。つまり、携帯電話に新たな付加価値をつけることが難しくなってきているということだ。
そうした時代にあって、今後の携帯電話はどういう方向に進むべきなのだろうか。価格.comのユーザーを対象に行った今回のリサーチでは、ある意味ではごく当たり前ともいえる結果が明らかになった。
まず、携帯電話の月額使用料金であるが、これについては7割を超えるユーザーが、海外の携帯電話などと比べてまだ「高い」と感じている。また、最近の料金プランはかなり複雑化しており、どれが自分に合った料金プランなのかわかりづらくなっているという現実もうかがえる。特に、シェアではトップを走るドコモと2位のauに関してこの傾向が強く、最近料金プランを変更したこの2キャリアに関して、料金プランへの不満がかなり高いことが明らかとなった。 そんな中で、ほぼ唯一といっていいほど高い満足度を示したのが、最近躍進中のソフトバンク「ホワイトプラン」だ。このプランを契約しているユーザーのうち、料金が「高い」と感じているユーザーは半数程度。3割のユーザーは「安い」とさえ感じている。基本使用料980円で、同キャリア同士の通話・メールが基本無無料というこのプランは、契約内容もわかりやすく、多くのユーザーに支持されてきている。
これに対抗するように、ドコモ、auも、各種の「割引サービス」を打ち出しているが、この「割引サービス」は、「長期契約割引」や「家族間割引」などを中心に利用しているユーザーは多いものの、割引サービスを契約したことによって、携帯電話の利用頻度が高くなるというより、割引サービスを契約しないことで料金が高くなるのを抑えるというイメージが強い。そして、こうした各種の割引サービスが、携帯電話の料金体系をいっそう複雑にしている原因でもあるから、携帯キャリアに対するユーザーの不満が高くなるのも当然のことかもしれない。
また、携帯電話の機能に目を向けると、一般的な「カメラ機能」は9割のユーザーが「よく使う」と答えているが、そのほかの機能の利用割合はどれも半数に満たない結果となった。最近話題の「ワンセグ」などは1/3ほどのユーザーが利用しており、比較的健闘しているが、それ以外の各種機能はさほど使われておらず、ユーザーの側でも機能面の頭打ち状況が見て取れる。
こうした中で、携帯電話の買い替え・買い増しを行う際に重視するポイントは、「使いやすさ」と「デザイン」がトップを占めるという結果が出た。機能的にはほぼ出そろった感のある携帯電話に対して、今や「新機能」は、購入における重要なファクターにはならず、むしろ「シンプルだけど使いやすい製品」「電話としての品質が高く料金の安い製品」が求められていることが明らかとなった。なお、今後に期待する機能としては「防水・防塵機能」を押す声が多く聞かれた。ユーザーにしてみれば、「機能的にはこれで十分。むしろ通話料金やパケット料金などの使用料金を安くしてほしい」というのが、偽らざる本音といえるだろう。
携帯電話のキャリア別のシェア。昨年8月に行った調査と比べてシェアに大きな差は見られないが、これまで比較的好調にユーザー数を伸ばしてきたauのシェアが約1ポイント下がっている。ドコモも若干減少。ソフトバンクに関しては若干増という形だ。
各キャリア別に、現在契約しているプランを聞いた。キャリアごとにかなり特徴的な結果が出ており興味深い。キャリア別に詳しく見ていこう。
ドコモ
昨年末より投入された「905i」シリーズから選べるようになった新プラン「バリューコース」が、すでに1/3ほどのユーザーを獲得している。「バリューコース」は、これまで行ってきたように携帯電話の初期費用を月々の使用料に上乗せしない分、月々の請求額が少なくなるというもの。基本料金が一律で1,680円も安くなるので、1年以上使えば元が取れるような計算になり、ここ最近「905i」「705i」シリーズを購入したユーザーのほとんどがこちらのプランを選択しているものと思われる。 「ベーシックプラン」は、これまで通りのプランで、こちらは4割のユーザーが使用している。「その他」の詳細は不明だが、従来の「FOMA」「mova」のプランを契約しているユーザーがここに入るものと思われる。
au
auのプランは複雑なためか、「その他」と答えたユーザーがもっとも多い結果となったが、「サポートプラン」(cdma 1x)と答えた30%近いユーザーを除けば、そのほとんどが「cdma WIN」の利用者であると思われる。「cdma WIN」の料金プランは、細かくわかれており、主なプランだけで8プランあるが、いわゆる「定額プラン」は存在せず、ドコモのような「バリューコース」のような割引プランも採用していないため、ユーザーは自分の使用状況を分析してプランを契約する必要がある。「シンプルプラン」は基本使用料が1,000〜2,000円と安い従量制プランだが、その利用者も13%ほどおり、さほど通話はしないが、受信用に携帯電話を持っているというユーザーも1割以上いることが予想される。
ソフトバンク
ソフトバンクの場合は、基本使用料980円で、ソフトバンク端末同志の通話やメールが基本無料となる「ホワイトプラン」が大人気。今回の調査でも3/4のユーザーがホワイトプランの契約者となっている。他キャリアの一般的なプランに当たる「オレンジプラン」は1割にも満たない。これを見ても、「ソフトバンク=ホワイトプラン」という図式はほぼ一般的になっているといえる。
ウィルコム
ウィルコムも契約プランの割合はかなり特徴的だ。月額2,900円でウィルコム同志の通話が無料となる「ウィルコム定額プラン」がほぼ3/4を占め、「ウィルコム=定額制」の印象が強い。無料通話料込みの「スーパーパック」は1割にも満たず、ほとんどのユーザーが「定額プラン」を選択していることがわかる。
ドコモ利用者
au利用者
ソフトバンク利用者
ウィルコム利用者
最近の携帯電話料金の広告、CMについての感想を聞いた。その結果は、「高いと思う」がもっとも多く、「安いと思う」を大きく上回り、半数以上のユーザーが「高い」と感じていることがわかった。 最近はソフトバンクの「ホワイトプラン」など低料金をうたったCMが目立つが、それ以外のドコモ、auなどは、料金プランについての明確な説明をしていない場合が多く、そのあたりも「高い」と思わせる理由の一因になっているのかもしれない。
現在の電話料金についてどう感じているかを聞いた。 全体的には「高い」と感じているユーザーが6〜7割と多く、ほとんどのユーザーが電話料金を高いと感じていることがわかった。ただ、キャリアごとに若干の温度差があり、ドコモ、auは7割を超えるユーザーが「高い」と思っているのに対し、ソフトバンク、ウィルコムのユーザーは6割以下に留まっている。基本料金の安い定額制プランを導入しているこの2キャリアについては、電話料金が「安い」と感じている割合も3割前後あり、割安感を実感しているユーザーも多いといえる。 プランごとに細かく見ていくと、やはりソフトバンクの「ホワイトプラン」がダントツの満足度で、料金が「高い」と感じているユーザーは56.5%、逆に「安い」と感じているユーザーが32.4%という結果になった。逆に、もっとも「高い」と思われているのが、auの「新料金プラン」。Q2の回答とも関連するが、料金体系が非常に細かくわかりづらいため、自分に最適なプランがどれなのかわからないことも、この結果に少なからず影響しているものと思われる。
割引サービスでもっとも多いのは、契約期間の長さによって割り引かれる「年割」(au)などの「長期契約割引」と、家族間の通話が無料になる「ファミリー割引」(ドコモ)などの「家族割引サービス」。この2つの割引サービスには半数以上のユーザーが契約しており、かなり一般的なオプションとなっていることがわかる。 それ以外の割引サービスでは、指定の電話番号への通話料金が割り引かれる「指定割」(au)などのサービスが、「パケ・ホーダイ」(ドコモ)などのパケット通信割引サービスよりも多いのが意外といえば意外。ただし、auの新料金プランでは、「指定割」を含むいくつかの割引サービスに加入することで、端末自体の初期料金が安くなるキャンペーンを行っているため、このことが原因になっている可能性は否定できない。
料金割引サービスを導入した後で、携帯電話の利用状況がどのように変わったのかを聞いた。当然ながら「利用が増えた」という回答が多いのかと思いきや、意外に「変わらない」という回答が、どの項目でももっとも多いという結果になった。料金が安く(あるいは無制限に)なったとしても、携帯電話の利用自体にはそれほど影響を与えないということだろう。 なお、割引サービスで利用が増えたと回答した割合がもっとも高かったのは、「モバイルサイトの閲覧」で、30.6%のユーザーが「利用が増えた」と回答している。続いて「通話時間」(28.4%)、「メールの送受信」(25.7%)となっているが、通話料金に比べてモバイルサイトのパケット料金が標準状態ではいまだにかなり高い設定になっていることで、割引サービスに入らないとパケット通信は怖くて使えないというユーザーの心境が現れているものといえる。 むしろ、利用頻度は変わらないものの、割引サービスに入らないと「高くつく」から、仕方なく入っているという人のほうが多いのかもしれない。
携帯電話に搭載される機能でよく使うものを聞いた。 もっとも使用されているのは、やはり「カメラ機能」で、9割近い方が利用している。 2位以下は大きく離れて、その利用割合も50%以下になるが、意外に多かったのは、「赤外線機能」(41.3%)、「QRコード認識機能」(39.2%)、「ワンセグ」(34.8%)など。やや敷居が高いと思われていた「おサイフケータイ」(22.1%)や「GPS機能」(21.9%)も健闘している。こうした最新機能も、意外と多くのユーザーが活用していることがわかった。 逆に、意外と使われていない機能としては、「PCサイトビューワー(フルブラウザ)」(10.2%)、「国際ローミング」(8.6%)、「テレビ電話」(7.7%)など。特に、一時期大きく宣伝されていた「テレビ電話」に関して、ほとんど使われていないという結果になったのが印象的だ。
最近話題になっている「おサイフケータイ」を使っているユーザーに限定して、その利用頻度を聞いた。その結果は「ほぼ毎日」使用するという方が26.3%ともっとも多く、「1週間に2〜3日」「1週間に4〜5日」という回答も比較的多かった。利用している人は、意外によく使っていることがわかる。 ここまでひんぱんに利用されるその理由としては、定期券代わりに使える「モバイルSuica」の影響が無視できない。定期券代わりであるからほぼ毎日使用するし、場合によってはコンビニエンスストアなどで買い物もできるという利便性が受けているのであろう。
携帯電話を購入、または買い換えする際に重視するポイントを聞いた。もっとも高いポイントを得たのは「操作性のよさ」(64.7%)。続いて、「本体デザイン」(57.7%)、「月々の基本料金」(55.3%)、「携帯電話自体の価格」(49.1%)となった。逆に、「ワンセグ」や「カメラ」などの機能性を重視するという意見はもっとも多くて37.1%と、今やさほど機能性は求められていないことがうかがえる。 現在、携帯電話自体の機能はどのキャリアでもある程度そろってきており、機能性よりも操作性やデザインのほうを重視するユーザーが増えている。一通りの機能を経験してきたユーザーが、使う機能と使わない機能とをはっきりと認識してきた結果といえるかもしれない。
フリーアンサーで、携帯電話に関する自由な意見を書いてもらった。 意見の中でもっとも多かったのは、「使用料金の高さ」を訴える声。かなり多くのユーザーが、まだまだ日本の携帯電話料金は高いと感じており、「それほど使わないのに、基本料金だけでもかなり取られる」というようなことを不満に思っている様子がうかがえる。また、「料金体系が複雑すぎて理解できない」といった意見や、「これ以上の機能はいらないから、シンプルでわかりやすくしてほしい」といった意見も目立った。 また、今後の携帯電話に期待する機能としては、「防水・防塵性」をあげる声が意外に多かった。また、バッテリーの持続時間を長くするために「太陽電池搭載」といったアイデアも寄せられている。 全体的には、これ以上の多機能性よりも、今の機能性のままでいいので、バッテリーが長持ちし、月々の使用料金も安い製品が求められているといった印象だ。
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