輸入小麦の小売価格が一気に30%も上がるという。昨年秋に10%あがったところだからこのインパクトは大きい。値上げの理由は「輸入価格が上がったから」と農水省は説明しているが、そもそも小麦の輸入価格と、小売価格のどちらが高いかご存知か?
昔(食管法のころ)、国は米を生産者から高〜〜く買い上げ、買い上げ価格より安く小売をしていた。農家の所得を保証しているのではないか、という批判に対して国は「消費者が安く米を食べられるため」と説明していた。このころの国の説明を覚えている人なら政府は小麦を高く仕入れて安く売ってくれて売るのではないかと思うかもしれない。だが、
小麦は輸入価格より小売価格のほうが高い。しかもはるかに高い。理由は(関税ではなく)農家に対する助成金がど〜〜〜〜〜〜ん!と乗っているからだ。
日本の小麦が高いのは、世界の相場のせいではない
この「関税ではない」というところ重要である。関税なら一般財源だ。だが、乗せられているのは、農水省が勝手に使える金。小麦農家への補助金に特化した金である。これが、「従量制」でかかってくる。金額は1トンあたり1万6千円あまり。輸入価格が4万円くらいだから、これだけでも小売価格は輸入価格より3割がた高くなっているわけだ(実際にはこれだけではない。制度はとても複雑でわっかりにくいが、まだまだ乗っているらしい)。
日本の小麦消費量はおよそ570万トン、このうち輸入は500万トンである。つまりほとんどが輸入だ。このほとんどない国産小麦の単価がまたバカ高い。その差額を生めるためあの手この手で輸入価格を吊り上げるのが農水の仕事である。昔「貧乏人は麦を食え」とか言ったおっさんがいたが、こう吊り上げられたんじゃあ麦も食えない。いっそ国内に小麦農家がぜんぜんなければ、安い小麦が食えるのかと思うと税金で農水族を養うのは2重のお損である。
→PTS わからないのは、上乗せ補助金だけではない。小麦は、普通の商社が輸入するとおよそ非常識な金額の関税がかかる仕組みになっているらしく、事実上輸入業務を国が独占している。この輸入価格がまた相場より高いという話もあるのだ。これなんかにおいますねえ。なぜ商社が参入できないような仕組みになっているのかわかるように説明してほしいものだ。
国民の中には食料の自給率をもっと上げるべきだと考えている人は多いと思う。たしかに食料自給率があまりに低いと大東亜戦争のような無謀な戦争には突入できない。周りが敵だらけの戦争を始めたいなら食料とエネルギーの自給は必須だ。つまり食料の自給は「戦争保証」である(要注意:「食料『安全』保証」という言い方は欺瞞)。
最近では、農水省はギョーザ事件を国産保護の追い風としているらしい(私は農水省が輸入品に毒を入れたんじゃないかと疑っているくらいだ)が、いずれにしても、自給率を上げるなら上げるなりに、国内農業の合理化を進めてゆかなければならないはずだ。それをまったくしないで、輸入品に高関税をかけたり(米なんか400%近い関税がかかっている)、わけのわからない特定財源を乗っけたりするだけでは、行政の存在価値など全くない、というか消費者から見れば「悪の枢軸」だよ。
とテレビで生保をもらえなかった人が、「おにぎりが食べたい」といって餓死したという話があったけれど、もし、輸入米に関税がかかっていなければ、こんな話は激減するはずだ(だって輸入米って安いんだもの)。そう考えると、基本的な食料に多額の関税をかけてその価格を吊り上げるのは、意図しない殺人のようにも思われるのだ。
農水省。誰の利益を守っているのかわからないこの役所には、やたらと役人の数が多いし強い。国交省も厚生省も文科省も役立たずだとは思うけれど、農水省はこれらの雑魚とは桁違いである。 テーマ:政治・経済・時事問題 - ジャンル:政治・経済
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