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奈良調書漏出事件、「無罪主張」を表明 初公判で弁護側

2008年04月14日

 奈良県田原本町で母子3人が死亡した06年6月の医師宅放火殺人事件をめぐり、長男(18)=中等少年院送致=らの供述調書を多数引用した本が出版された問題で、調書を漏らしたとして刑法の秘密漏示罪に問われた精神鑑定医の崎浜盛三(さきはま・もりみつ)被告(50)=京都市左京区=の初公判が14日午前、奈良地裁(石川恭司裁判長)であった。弁護側は罪状認否に先立って事実上の無罪主張を展開し、起訴事実について検察側に釈明を求めた。罪状認否や検察側冒頭陳述などは次回の5月1日に持ち越された。

 午前10時前に開廷。検察官による起訴状の朗読が終わると、弁護側が起訴事実について検察側にただす「求釈明」に移った。約1時間で閉廷した。

 長男の精神鑑定を担当した崎浜医師は、06年10月ごろ、自宅や京都市内のホテルで、正当な理由がないのに、フリージャーナリストの草薙厚子氏に供述調書の写しや鑑定結果などを見せ、医師として業務上知り得た長男と父親の秘密を漏らしたとして起訴された。秘密漏示の罪で公判が開かれるのは極めて異例だ。

 冒頭、弁護側は「無罪を主張する予定です。事実関係については争いません」と述べた。崎浜医師自身による鑑定結果を踏まえて「少年に殺意がなかったことを社会に広く伝えたかった。広汎性発達障害に対する社会の誤った認識を是正する正当な行為だった」と主張した。

 また、精神鑑定は学識経験者として命じられた業務だとしたうえで「医師としての業務ではなく、(刑法上の)秘密の保護の必要性はない」と訴え、検察側に鑑定を医師の業務と主張する根拠をただした。検察側は「裁判所から医師として命じられた業務だ」と反論した。

 弁護側は「『秘密』の定義」や「誰との関係で守秘義務違反にあたるのか」などもただした。検察側は「起訴状記載の各事項が秘密にあたる」などと答えたが、それ以上の釈明はしなかった。

 調書漏出の際には講談社の編集者らも立ち会ったのに訴追されず、起訴状にも記載されていない点について、弁護側は「報道を規制するには、むしろ情報提供者のみの刑事責任を問うて情報源を絶つべしという政治的判断だ」としており、この日も「検察が事実をゆがめた」と主張。長男と父親の告訴についても「真の意思に基づくものではなく、検察側が告訴を促した『国策捜査』だ」と批判した。

 《供述調書漏出事件》 医師宅放火殺人事件をめぐって、草薙氏は、事件当時高校1年生だった長男の供述調書の写しなどを写真撮影し、多数引用した単行本「僕はパパを殺すことに決めた」(講談社)を昨年5月に出版。長男と父親の告訴を受けた奈良地検は崎浜医師や草薙氏の自宅などを家宅捜索した。草薙氏については取材行為に社会通念を逸脱した行為はなく、違法性は問えないとして嫌疑不十分で不起訴処分とした。

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