〔（上）からのつづき〕

4月18日（金曜）13時30分　橋爪明日香　新宿歌舞伎町ロフトプラスワン

　2時から映画『靖国』試写。そのあと、4時ごろから右翼による意見交換会。その意見交換会の方をライブ配信する予定。間に合ってよかった、ホッ。

　最終日は午後いっぱい外、とわかっていたので、2日前から、朴さん、萩原くんと3人で引越し準備を始めていた。

　ところが今朝、土壇場で、音声ケーブルがみつからない。今日使う機材までダンボールに箱詰めしてしまったのだ。せっかく片付けた箱5つをすべて開け、急いで捜し出し、ドシャ降りの雨の中を、朴さんと駆けつけた。さて、右翼は話題の映画にどんな反応を示すのだろうか。
14時00分　平野日出木　近くの喫茶店チロル

　渋井さん到着予定（15時）までのレイアウトを終え、一段落。3時からは会議が控える。青木理（おさむ）さんの来訪まで、まだ30分ほど時間がある。

　最終ランチは、何もなければ、西松建設近くのチロル、と決めていた。この店も18日が営業の最終日だったからだ。

　店内は、客の入りがいつもより多く、2時でもほぼ満席。いつからか、ひとりで昼に出るときは、この店に通うようになった。不思議と落ち着き、つかの間、気分転換できる店だった。ここを閉店し、どこかに移転するわけではないという。ここは道路予定地ではないが、いろいろ事情があるのだろう。

　セットのコーヒー代を負けてくれた。「いつもどうもありがとうございました」と馴染みの店員2人に頭を下げられ、しみじみ。

14時40分　青木理　オフィス

　新橋に所用。もう移転済みかと思って新オフィスを訪問しようとしたら、引越しはこの週末だという。そこで虎ノ門に寄ることにした。2006年の創刊後の2、3カ月は毎日通ったが、今は月数回ペース。あのころはビルの並びにコンビニや喫茶店があった。風景は相当変わった。

　平野さんから資料を渡され、読み始める。ある内輪の勉強会の様子を録音し、それを文章に起こしたものの全文。笑い声は何カ所かにあるけれど、特に不真面目なようにも、何かを揶揄（やゆ）しているようにも見えない。すでに某週刊誌が報じたネタでもあり、オーマイニュースで取り上げる必要性は薄いのでは、と伝えよう。

15時00分　藤倉善郎　関西某所

　朝イチで新幹線に乗って、今、西方に出張中。ちょうど偉い人の話を聞いたりしています。諸般の事情で詳細は書けませんが、そのうち東京に戻ると思います。こちらでは喫茶店や道端でノートパソコンを開いてスカイプで取材や打ち合わせの電話をかけたり、原稿を書いたり、やり手ビジネスマンのふりをしています。今夜は会費制のパーティーに潜入する予定です。

　みんなより1日早く、きのう（木曜）自分の机のガラクタを整理しましたが、宗教・占い・環境・中国・酒関連の本がたくさんたまっていて、自分の関心ごとが、いかに一貫性がないか思い知りました。ほかにも、創価学会の3色団扇や3色カスタネット、映画『純愛』のポスターなど、意味不明なガラクタもありました。

16時00分　軸丸靖子　某ブライダルエステ

　いよいよ、明日19日（土曜）は結婚式。今ごろ、会社のみんなは引越し準備でバタバタしているんだろうか。私はひとりマッサージ三昧で、少し申し訳ない気がする。でも、私の式の日取りの方が、引越しの日程より早く決まっていたんだし、式の前日ぐらい休んで当然だし……。

　それにしても、今週は大忙しだった。痴漢ものやら、死刑ものやら、物騒な取材が押し寄せ、荷物の片付けにはあまり手が回らなかった。きのうの夜も平野さん、渋井さん、朴さんと、あるテープ起こし資料の解釈をめぐって議論していたら終電で帰れなかった。

　結局、時間切れで、データのバックアップもしっかり取れなかった。なくなって困るものはあまりない気がするけれど……。

　虎ノ門での心残りは3つ。日本刀の店と、琵琶の店に行けなかったこと。最近テレビで紹介されて人気のねじキューピーを全種類そろえられなかったこと。いつも行列が出来ている和風ランチバイキングのお店に行きそこねたこと……。ふえー、あーリラックス。

17時00分　朴哲鉉　新宿歌舞伎町ロフトプラスワン

　すでに何回か見た僕にとって、映画「靖国」自体は何の思い入れもない。内容がどうであれ、出演者が「だまされた」と主張している以上、この映画はクソだ。フィクション映画ならともかく、ドキュメンタリーで中心的なキャストの役割って計り知れない。この映画は、自分の出演シーンを削除してほしいと言っている刈谷さんなしでは成り立たない映画である。その刈谷さんが「最初の企画意図と違う」と言っているのに、これに対して配給会社は詳しい説明をしていない。やはりなんかあるわけだ。

　間違ったことがあれば、間違ったと謝罪して、そのうえで、正しいプロセスにのっとって上映させよう。ごく当たり前なことである。そう思っていた僕の気持ちを、右翼の人たちは代弁してくれた。彼らの言葉には、飾りがなかった。そこが日本の左翼と違うところだ。思ったことをストレートでいう。飾らないことは大事だ。今日もいろいろ学んだ。あー、オレって成長してる。

17時過ぎ　渋井哲也　オフィス

　3時過ぎに虎ノ門のオフィスに到着したら、青木さんもいて、資料を読み込んでいた。前の晩に、軸丸さん、朴さん、平野さんたちと遅くまで議論していた資料だ。平野さん、元木さんは会議のようで不在。

　デスク作業をしながら、「学校裏サイト実態調査」について記事を執筆していると、元木さん、平野さん、もうひとりの平野氏ら5人が会議から戻ってきた。表情険し目。

　今日は引っ越しのためか、大雨のためか、あるいは週末のためか、よくわからないが、編集部がそわそわしている様子で、なんだか落ち着かない気分。
17時30分　奥野洋子　オフィス

　私の席の隣にあるグリコBOXに、入れ替わり立ち替わり人が来ています。何を買うか毎回宣言していく人、必ずお腹がすいた～と言いながら買っていく人、色々な癖を見てきました。あ、Kさんが今、ビスコを購入。

　印象深かったのは、Uさんが1円単位の小銭を周りからかき集めて、100円のグリコを大事そうに購入する光景。引越し後は見られなくなるかと思うと、何やら感慨深いものが。

17時30分　平野日出木　オフィス

　メールチェック。昨日、「虎ノ門オフィス最後の1日のメモを上げてください。それをつなげてドキュメント風の記事を作ります。締め切りは金曜6時」と、元木さん含め、全員にメールしておいた。果たして、どれぐらい来ているだろうか。数える。

　おいおい、寄こしていない奴がかなりいるじゃないか。TVチームは壊滅。

　「おーい、メモまだの人、早く出してぇ。じゃないと原稿書けないから」と大声を出す。それにかぶさるように、「あと30分で、回線切れますよお」という声が聞こえる。妙にあせる。

　渋井さんのメモを開いて、愕然。


　「おーい、渋井さん。こんなんじゃ、全然ダメ」
　「どうして」
　「だってこれじゃ、原稿書けないから」
　「どういうのならいいの。見本見せてよ」
　「見本ってさ、よくあるじゃない新聞に。メモをつなげれば、そのまま原稿になるようなスタイルで出して、って指示したでしょ。渋井さんがアンカーになったとき、こういう原稿が来ればラクだな、って思えるようなメモちょうだいよ。これじゃ、つなげても記事になんないでしょ」

　もうすぐ回線が切れるせいか、私も渋井さんも声が大きくなる。
17時50分　渋井哲也　オフィス

　作業員がぞろぞろ事務所に入ってくる。思わず、「サードインパクトが始まるのね」と口走る。サードインパクトとは、アニメ『エヴァンゲリオン』に出てくる用語で、世界の再構築がはじまるような、そんなニュアンスだ。すると左隣の森くんが理解してくれたようで、「大丈夫です。サードインパクトじゃありませんから」　オフィスネットワーク環境がそろそろダウンするらしい。

　メモをつき返された。なるほどね、意味はわかった。最初からそう言って欲しい。そんなに大声出さないで欲しい。

18時00分　萩原浩介　静岡県東伊豆町・稲取小学校体育館

　1年前から取材している、私の地元の観光事務局長の講演がありまして、その取材に来ています。そのため1日早く、木曜夜で虎ノ門をおさらばしました。

　きのうはまだ多くの編集部員が残り、雑談、仕事、軸丸さんの結婚式用VTRを作ったりして日常モードだったので、実感ゼロでした。今ごろ編集部では引越し前で盛り上がっているんでしょうか。

　大学卒業してすぐに、あのぼろオフィスで働いたわけですが、色々ありました。たとえば……。誕生日にみんなからケーキ「荻原（オギワラ）君、誕生日おめでとう！」と書かれたカードをもらったことが、一番の思い出でしょうか（こんなのしか思い浮かばない、やべ）。あ、ちょうどこれから、その講演が始まるところなので、また。

18時30分　平野日出木　オフィス

　ネットワークがシャットダウン。会社のパソコンはとりあえず終了。持参した自分のノートを開いて、無線でネットにつなぎ作業続行の体制を整える。

　午後に見つかった不具合について確認。オフィス移転に伴う週末の作業体制についても、お知らせ欄に書かなくてはならない。段ボールが部屋中に積み重なる。まだ、編集作業は続く。引越し作業はこれから本番……。


【記者注】 弊社関係者のメモをもとに作成しました。実際の引越し作業は金曜18時30分に一段落したわけでは全くなく、メモを上げる時間的余裕のない（したがって、ここには登場しない）関係者の尽力を得て、金曜は深夜まで、また土曜早朝から日曜にかけて作業し、終了しました。

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