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クローズアップ2008:国交省が道路法人改革最終報告 姿勢だけのメス

 ◇道路財源3法人解散、50→16に 実態・存廃基準、乏しい説明--身内も批判

 道路特定財源に関する国土交通省の改革本部(冬柴鉄三国交相)は17日、同財源の受け皿となってきた公益法人の数を、今年度から3年間で現在の50法人から16法人に削減するとともに、道路特定財源からの支出(670億円)を半減することなどを盛り込んだ最終報告を公表した。国民から批判を浴びた無駄遣いの温床にメスを入れる姿勢を示した形だが、16法人を存続させる基準はあいまいなままだった。すでに与党からも「甘すぎる」との批判が出ている。【位川一郎、田中謙吉、高橋昌紀】

 最終報告は、道路財源の支出先の法人のうち▽駐車場整備推進機構など3法人を解散・廃止▽国際建設技術協会など15法人への道路特定財源からの支出中止▽各地の建設弘済会など10法人の株式会社化を視野に入れた非公益法人化--などを打ち出した。

 国交省OBの天下り役員については▽トップは70歳、その他の役員は65歳の定年制導入▽3~5割の給与カット▽常勤役員数を2割、総役員数を3割削減--する。また、冬柴国交相が給与3カ月、平井卓也副国交相と金子善次郎政務官が1カ月、事務次官以下職員15人が1~3カ月(いずれも10分の1)を自主返納する。

 冬柴国交相は会見で「国民の目線に立ち、かつ政治主導で検討した。不退転の決意で実現する」と強調した。

 だが、質疑応答に入ると冬柴国交相や平井副国交相の説明は、一転して歯切れが悪くなり、釈明に追われた。

 役員報酬カットについては、現在の報酬の実態を明らかにせず、「これでは、どれだけ削減したか分からない」などと批判が集中した。しかし、平井副国交相は、公益法人が民間であることを理由に開示を拒否した。

 また、解散・廃止とした3法人などの活動実態についての説明も乏しく、「どの点が問題だったのか」との質問が相次いでも、具体的な説明はなかった。

 この時期に最終報告をまとめたのは、今月末に予定するガソリン暫定税率復活の再可決をにらみ「道路」への逆風をかわす意図があるのは明らかだ。ただし、17日に開かれた公明党の国土交通合同部会では「なぜ16法人が残るのか」「国民の納得にはほど遠い」と厳しい意見が相次いだ。

 改革の対象となったのは、道路特定財源から年500万円以上の支出を受けている50公益法人。「公益性が高い」(国交省幹部)との理由で、今後も引き続き道路特定財源から支出を受ける16法人には、国交省単独ではなく、他省庁と共同管轄する法人も目立つ。

 政府は、全省庁が所管する6776法人の見直しを進めており、今回の改革は、その「先行ケース」と位置づけられているが、各省庁が協力することで、組織存続を図った可能性が高そうだ。

 50法人をめぐっては、これまでずさんな出費が目立った。

 「国際建設技術協会」は07年に約9200万円の支出を受け、海外の道路事情に関する調査報告書を作成した。しかし、発行部数はわずか3部。インターネットの百科事典「ウィキペディア」の表を引用するなどのずさんさも批判された。

 また福利厚生費で職員旅行の費用を負担した例もあった。「河川情報センター」(62人分約232万円)と「先端建設技術センター」(44人分約146万円)は全額支出していた。

 ◇無駄遣い生む「財布」

 道路特定財源という国交省にとって「便利な財布」は、本省関係の支出でも膨大な無駄遣いを生んできた。

 道路整備に関する啓発活動「未知普請(みちぶしん)」の一環として、全国で公演された「道路ミュージカル」。地方の国道事務所が劇団と随意契約を結び、03~06年度に106公演を実施、計約5億7000万円が投入された。国交省の出先機関にある職員用マッサージチェアには、89~06年度で計約780万円が支出されていた。いずれも「支出に理解が得られない」として中止になった。

 道路特定財源といいながら、道路以外の公共事業にも投入されている。98~07年度には河川整備事業に約3140億円支出された。「道路を守るため」という理屈付けだった。

 一方、関東地方整備局の職員7人は、07年4月~08年2月末に計1134回もタクシーを利用し、その費用約2200万円が道路整備特別会計からの支出だった。中には1人で490万円分も使った職員がいた。

 一般会計から給与を受け取っている地方整備局の職員(一般会計職員)の中には、道路特会から残業代や出張旅費を支給されているケースもある。06年度でみると、残業代は3億5600万円、出張旅費は3億3600万円に上っている。

 ◇首相、試される本気度

 国交省が今回、統廃合の対象にした50の公益法人は、もともと06年に成立した公益法人改革関連法によって、「公益性」の有無を審査されることになっていた。しかし、同法の審査手続きでは、無駄遣いを根絶する保証がないため、福田康夫首相は15日、「骨太の方針08」に公益法人の見直しを加えるよう指示。国交省の最終報告は首相の本気度を試す先行指標になる。

 公益法人改革関連法は既存の公益法人が税制などの優遇措置を受けたければ、今年12月以降、民間有識者からなる「公益認定等委員会」に申請しなければならないと定めている。この場で公益性がないと認定されたら、解散するか、改めて一般法人として認可申請するしかない。

 ただし、審査は事業内容に限られ、カネの出入りや天下りについて判断する権限がない。存続させる16法人でなお不適切な運営が行われれば、首相は一層の批判を覚悟しなければならない。【中田卓二】

毎日新聞 2008年4月18日 東京朝刊

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