ここから本文エリア

現在位置:asahi.comマイタウン兵庫> 記事

お金苦に死なないで

2008年04月18日

写真

「多重債務による自死は救える命。困ったら相談して欲しい」と話す弘中照美さん=神戸市中央区

 消費者金融などから多額の借金を抱えた人の自殺の予防や遺族の支援に取り組む「多重債務による自死をなくす会」(神戸市)が今春、設立1周年を迎えた。代表幹事の弘中照美さん(47)は、同会の取り組みなどをつづった「お金のために死なないで 多重債務による自死をなくす」を岩波書店から出版した。弘中さんは「借金で苦しむ人に、相談できる場所があることを知ってもらいたい」と話す。(宋光祐)
 「お金のことで死なないでほしい。生きていてほしい」。著書にも書いた弘中さんの「心からの叫び」だ。自身も多重債務者だった。バブル崩壊後の不況で前夫の会社が行き詰まり、月額36万円の住宅ローンを返済できず、消費者金融から借金を繰り返した。
 その問題がほぼ解決した04年8月、別居していた実母が自殺した。実母も弘中さんの知らぬ間に借金を重ね、死を選んだ。弘中さんは当時、司法書士事務所で多重債務問題の相談員をしていたが、実母の悩みに気づけなかった。母を助けられなかった自責の念は今も消えないという。
 「母を救えなかった分、今まさに追い込まれて死のふちにある人の力になれたら」。そんな思いから、昨年3月、「多重債務による自死をなくす会」を設立、電話で相談を受けるホットラインを開設した。第1部では、自らの体験や同会設立までをつづっている。
 第2部では、同会の活動に触れながら、遺族の心のケアや自殺対策に取り組む市民団体とのつながりを紹介した。多重債務問題が解決しても、借金をしたことへの自責の念が消えなかったり、破産したことで社会に居場所をなくしたりして苦しむ人がいるため、各種団体の連携した幅広い支援が必要だという。「多重債務Q&A」を添え、債務整理や改正貸金業法などについても解説している。
 警察庁の統計では、06年の自殺者は全国で約3万2千人。9年連続で3万人を超えた。このうち、経済苦を原因にした自殺者は約7千人で21%超に及ぶ。同会への相談件数は3月末現在、1500件を超えた。
 「私なんて死んでも誰も悲しまない」「死ぬ前に誰かと話したくて」。弘中さんは自殺寸前まで追い込まれた相談者や遺族の話にじっと耳を傾け、「案外といい解決方法が見つかるかもしれませんよ」などと粘り強く語りかけている。
 同会のホットライン(080・6159・4730、同4733、同4741)は午前9時〜午後8時。著書は208ページ、税別1500円。

ここから広告です
広告終わり

マイタウン兵庫

このページのトップに戻る