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【主張】空自派遣違憲判決 平和協力を否定するのか
イラクでの航空自衛隊の平和構築や復興支援活動を貶(おとし)めるきわめて問題のある高裁判断だ。
名古屋高裁は自衛隊のイラク派遣差し止め訴訟の控訴審判決で、差し止めと慰謝料請求の訴えを棄却しながらも「米兵らを空輸した空自の活動は憲法9条1項に違反するものを含んでいる」と、違憲判断を示した。
原告側は上告しない方針で、国側も上告できない。自衛隊のイラク派遣を違憲とする初の判決は確定する。この違憲判断は主文と無関係な傍論の中で示された。
傍論で違憲の疑義を表明することは、憲法訴訟のあり方から逸脱している。
しかも被告の国側は最高裁への上告を封じられる。これは三審制に基づき最高裁をもって憲法判断を行う終審裁判所としたわが国の違憲審査制を否定するものと指摘せざるを得ない。
違憲判断自体も問題だ。空自が多国籍軍の兵士をバグダッドへ空輸する任務は、他国による武力行使と一体化した行動であり、自らも武力行使したとの評価を受けざるを得ないとした。
空自は平成16年3月から、クウェートを拠点にC130輸送機で陸自などの人員、物資をイラク南部に輸送してきた。一昨年に陸自が撤退後、輸送範囲をバグダッドなどに拡大し、現在、国連や多国籍軍の人員・物資を輸送している。政府は「バグダッドはイラク特別措置法がうたう非戦闘地域の要件を満たしている」と主張しており、空自は当たり前の支援活動を行っているにすぎない。
忘れてならないのは空自の活動が国連安保理による多国籍軍の駐留決議も踏まえていることだ。
これにより、日本はイラクをテロリストの温床にしないという国際社会の決意を共有している。
憲法9条で禁止されている「武力による威嚇又は武力の行使」は、侵略戦争を対象にしたものと解釈するのが有力だ。国際平和協力活動を違憲という判断は日本が置かれている国際環境を考えれば、理解に苦しむ。
「自衛隊違憲」判断は35年前、あったが、上級審で退けられた。今回は、統治の基本にかかわる高度に政治的な行為は裁判所の審査権が及ばないという統治行為論を覆そうという狙いもあるのだろう。傍論に法的拘束力はない。
政府は空自の活動を継続すると表明している。当然なことだ。