【パリ7日高木昭彦】北京五輪の聖火リレーが7日、パリで行われた。チベット暴動に対する中国政府の鎮圧に抗議する人権団体メンバーらと警備陣の小競り合いが相次ぎ、立ち往生したリレー走者が数回にわたりバスに乗り込んで移動。最後はリレーが打ち切られるなど混乱が続いた。前日のロンドンに続き、中国政府に対する欧州の厳しい世論が映し出された。
聖火トーチが警備バスに運び込まれた際、安全上の理由から炎が消されるという異例の対応も余儀なくされた。主催者側は「ギリシャで採火した炎は残っている」と説明。種火を保管し一緒に移動したとみられる。
エッフェル塔を出発した聖火リレーは、炎を消そうとする者が沿道から飛び出したり、車道に寝そべるなどの妨害活動が頻発し、進行が大幅に遅れた。このため中国側が終盤のリレー中止を主催者に要請。聖火トーチは残り3分の1の地点からバスでゴールの競技場へ直接運び込まれた。
また、パリ市庁舎前では式典が予定されていたが、これも中国側の要請で中止となった。同市庁舎正面にはドラノエ市長の指示で「パリ市は世界各地の人権を擁護する」と書かれた横断幕が掲示されていた。同市長は「中国側がパリ市の対応を嫌った」と語った。
リレーを妨害したとして、国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」のメンバーや政党「緑の党」の地方議員らの身柄が拘束された。AP通信などによると、拘束されたのは少なくとも28人にのぼった。
聖火リレー走者は「より良い世界のために」と記されたバッジを着用した。スタート地点近くの広場では、チベット支援団体が開いた集会に数百人が参加。コース沿道ではいくつものチベットの旗が振られ、「チベットに自由を」とのシュプレヒコールが続いた。
警備当局は同日、3000人の警官を動員。聖火リレー走者を機動隊車両や白バイ、ローラースケートの警官らが取り囲む物々しい厳戒態勢だった。
=2008/04/08付 西日本新聞朝刊=