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酒の量販店、倒産が相次ぐ コンビニ参入で苦境

2008年04月16日

 豊富な品ぞろえで価格破壊をリードした酒の量販店が苦しんでいる。今年に入り、近畿地盤の大手2社が相次いで倒産した。規制緩和でコンビニエンスストアなど別の業態でも酒を売る店が増える中、無理な拡大戦略が行き詰まった。生き残りのカギは「専門性」にかかっているようだ。

グラフ  

 大阪や兵庫、福岡に約60店ある酒のディスカウントストア「酒の楽市」。展開する「前田」(大阪府池田市)は2月、大阪地裁に民事再生法の適用を申請した。ここ4年で店舗数を約30店から70店弱へと2倍以上に拡大。売り上げは倍増したが、不採算店も増えた。

 1月には「スーパーディスカウントストアー スピード」を近畿や千葉に持つスピード(大阪府枚方市)が民事再生法適用を申請。他にも「ヴイ」(新潟市)や「ヒーロー」(山口市)など、全国で倒産が続いている。

 90年前後から「町の酒屋さん」のシェアを奪って優勢に立った酒の量販店は、00年前後から店舗拡大を急ぐ。その背景には「酒の小売りの自由化」があった。

 酒類の小売り免許取得は98年に原則自由化が決まった。01年には店同士の間隔を定めた基準、03年には人口ごとの割り当て基準が廃止。中小零細の酒屋を守るため、酒屋が集中する地域で新規参入を抑える「逆特区」制度も06年8月になくなった。

 このため、利便性で勝るコンビニや価格競争力を持つ大手スーパーが次々と参入。競争は激しさを増し「良い場所を先に抑えるために出店を急いだ」と前田の申請代理人の辻川正人弁護士は指摘する。

 だが、肝心の消費量は少子高齢化や若者の酒離れで減少傾向にある=グラフ。安売りの原資だったリベートをメーカー側が減らし、スーパーとの価格差もつけにくくなっている。

 逆風の中、各量販店とも打開の道を探る。

 関西と東京で「SAKE市場グランマルシェ」など約20店を展開する徳岡(大阪市)は、独自商品が売り上げの3割を占める。社員が欧州などに出向いて輸入するワインは約3千種。蔵元と一緒に味を調整する焼酎も売れ筋だ。

 徳岡豊裕会長が着目したのは、「酒の持つ強い嗜好(しこう)性」。コンビニなどの売り場ではごく一部のメジャーな商品が多い。「酒屋が本来持つ、客の求める酒をそろえるノウハウを高めることが、量販店が生き残る道だ」という。

 関東地盤の「パスポート」(川崎市)は、個人経営の飲食店などへ配達するサービスで業績を伸ばす。再建中の「ヴイ」は、地元・新潟の希少な地酒やウイスキーで勝負。客の注文にも細かく応じる。同社幹部は「それが顧客を呼び戻す近道」と話す。(和気真也)

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