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入学金未払い・学費未納、悩む現場 退学勧告も

2008年04月16日03時02分

 千葉県立八千代西高校(八千代市)で入学金を払っていない生徒2人が入学式に出られなかった。入学金未納や授業料滞納の増加は全国的な現象で、退学など厳しい処分を決めた教育委員会も少なくない。同じ問題に悩む全国の公立高校からは、「やむを得ない」「それでいいのか」という賛否両論が上がる。

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 ◆総出で家庭訪問

 千葉県西部の県立高校の校長は「条例がある以上同様の対応を取るだろう」と八千代西に理解を示す。

 この校長は、前任の高校で授業料の滞納が相次ぎ、担任や事務職員総出で電話や家庭訪問を繰り返した。「卒業後になっても分割で頑張って払ってくれる家庭もある。払わずじまいでは不公平だ」

 別の県立高校の教頭も「まず入学して、その後に入学金を納めるというのはあり得ない。勝手に条例を変えてしまうことになる」という。

 未納は千葉だけの悩みではない。例えば、北海道教委は今春、資力があるのに道立高校の授業料や寄宿舎費を支払わない場合、生徒を出席停止や退学にすることにした。すぐに払えないなら5年以内に納付する計画書の提出を求める。

 山梨県も4月、授業料を6カ月分未納で出席停止、さらに2カ月で退学を勧告できるようにした。

 県立甲府工業高校は、経済的な事情を抱える生徒に許可制でアルバイトを認めている。ガソリンスタンドやコンビニで働き、授業料を自分で出す生徒もいる。戸田泰明校長は「将来は社会に出て働く子たちなので、その体験が生きてくる。そう指導する方法もあると思う」と話す。

 一方で、県立富士北稜高校の山田泰男校長は「決まりがある以上、八千代西は間違ってはいないと思う」としつつも、「入学式はスタートなので、本校ならとりあえず出させるかもしれない。矛盾するかもしれないが……」と悩む。

 茨城県では3月から実施した要綱で、7カ月以上滞納し、支払う意思も見せない滞納者に対しては簡易裁判所に申し立てることを決めた。

 県立竜ケ崎第二高校でこの制度を説明すると、33カ月分を滞納した卒業生が、毎月5千円ずつ支払うことを決めたという。仲澤進校長は「滞納者の家には私も何度も家庭訪問した。取り立て屋になったようでつらい」と話す。

 入学金(全日制5500円)を払っていない生徒や卒業生が06年度で850人を数えたのは大阪府立高だ。府教委は翌年度、入学を取り消せる規定を設け、滞納はゼロになった。

 しかし、「たとえ滞納しても入学式や卒業式に出席させないことはあり得ない。生徒に罪はないんだから」とある府立高校長(58)は言う。

 この高校では常に20〜30人が滞納。担任たちは電話や手紙、家庭訪問などで納付を説得。生活保護費に含まれた授業料を使い込む親もいるため、支給日には担任が市役所に付き添うことも。授業料の一部を担任が立て替えたこともあるという。

 ◆「県条例で仕方なく」

 「学校としても出席させたかった。しかし、県条例で入学金を納めないまま入学を許可することができず、仕方がなかった。苦渋の選択だった」。千葉県立八千代西高の須藤信夫教頭は、そう話す。

 県施設の使用料や手数料についての条例に従い、県立高校の入学金は、手続きをする入学式当日に納付する。

 八千代西は、入学予定者に合格証明書を送付する際、費用や納付法を説明する文書を同封した。3月には保護者向けに説明会を開き、「当日に全額納付が難しければ分割もできる。授業料減免制度もあるので、事務室に相談に来てほしい」と伝えた。2人の保護者は説明会に出席。8日の入学式には一方の保護者だけ出席した。

 県教委によると、県立高校の授業料滞納は99年度まで全くなかったが、00〜04年度に急増。その後、減少に転じたが、これは出席停止処分にできるなどとする要綱を定めたためではないかという。

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