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社説(2008年4月14日朝刊)

[米軍の事件事故]

仕組みを見直すときだ

 米軍による事件・事故が後を絶たない。何度、抗議を重ねても、何回、再発防止を申し入れても、防止効果が感じられないほど次から次に、事件・事故が起こる。

 米海兵隊の垂直離着陸攻撃機AV8ハリアーが久米島町の鳥島射爆撃場で、訓練中、五百ポンド(約二百二十七キロ)二発を提供水域外に投下していたことが十一日、分かった。沖縄市で三月に起きたタクシー強盗致傷事件は、その後の県警の調べで、現職の米憲兵隊員が犯行への関与を認める供述をしているという。事実だとすれば、由々しいことだ。

 日米両政府が事件・事故の発生に対して、何も対応してこなかった、というわけではない。旧那覇防衛施設局などは復帰後、職員が悲鳴を上げるほど連日、事件・事故の処理に追われた。再発防止策もその都度、打ち出している。

それなのに、一向に改善の実感がもてないのをどう解釈すべきなのか。そこが問題だ。

 各省庁の無駄遣いや、既得権にしがみついた省益主義が今、厳しい批判にさらされている。だが、こと在日米軍問題に関しては、安保既得権まで踏み込んだ議論が乏しい。日米同盟への影響を気にするあまり、聖域化してしまっているのである。

 「基地問題は沖縄など一部基地所在地域の問題」だという認識が政府の中に抜き難く存在するのではないだろうか。現状の仕組みを前提として再発防止策を講じるのではなく、仕組みそのものを見直す時だと思う。

 安保の運用をめぐる仕組みの、どの部分を改善すればいいのか。

 第一に指摘したいのは日米合同委員会の在り方である。渉外知事会(会長・松沢成文神奈川県知事)は、外務省に対し、日米合同委員会の中に自治体が参加する「地域特別委員会」のような協議機関を新設するよう求めた。

 現行の制度には、住民代表が住民の立場に立って直接、意見を述べる場がない。合同委員会で決定した事項の情報開示についても、依然として十分とはいえない。

 日米行政協定は旧日米安保条約に合わせて一九五二年に締結された。しかし、同協定を引き継いだ現在の日米地位協定体制は、さまざまな面で、現実にそぐわなくなっている。

 在日米軍がらみの話を外務省や防衛省の独占物にしてはならない。もはやそのような時代ではないのであって、住民生活に深くかかわる事案については、住民の声が直接届くような仕組みが必要である。

 事件・事故に関する情報は、米軍が義務として流しているというよりも、どちらかといえば恩恵的に流している側面が強い。AV8ハリアー機による誤投下に対し、在沖米海兵隊報道部は「所属部隊や航路、訓練計画については運用上の安全確保のため明らかにできない」と本紙の取材に答えている。

 そのような米軍側の対応をこれまで誰も不思議に思わなかった。だが、事件・事故に対する対応の仕方から改めていかないことには、実効性のある再発防止策を打ち立てるのは難しい。


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