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発信箱:物差しが一つでは=松井宏員

 「昔の大阪は、物差しが山ほどあった」と知り合いの大学の先生が言う。朝鮮半島から伝わった高麗尺に唐尺、着物を仕立てる時の鯨尺……。「時代とともに物差しが変わっても、大阪はいろんな分野で日本の中心地だったから、使い分けることを得意にしてた。まるで、背中に七つの物差しを差しているかのように」と先生は笑う。

 その伝でいくと、人をはかる物差しも山ほどあったはず。大阪で名をなした学者や実業家には、よそからやって来た人が多かった。多様な価値観を認める街だったということだろう。

 最近の大阪。大阪府は、歳出を大幅に削る「財政再建プログラム試案」を11日に発表した。道頓堀の「大阪名物くいだおれ」の突然の閉店発表もあって、なにかと騒がしいが、つい1カ月前のことを思い出してほしい。橋下徹知事が若手職員を集めた朝礼で、女性職員が超過勤務を巡って知事に反論した一件だ。

 東京都ではありえない、大阪らしい話だと思ったが、その女性職員を批判するメールや電話が府に殺到した。先の先生は「だいたい、テレビカメラを入れて、知事がパフォーマンスの場として設定したんやから」と首をかしげる。これも知事流のテレビの使い方なのだろうか。

 府議会で、知事の著書の一節を批判した民主党議員の事務所にも、非難のメールが来たという。お上にたてつくのは許さんという風潮は、まったく大阪らしくないし、気色が悪い。物差しが1本しかなくなっては、いくら財政を再建したって、おもろい街ではなくなってしまう。(社会部)

毎日新聞 2008年4月13日 大阪朝刊

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