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インフレが戻ってくる!

2008年04月12日

 ガソリン価格は下がったが、一方で、パンやうどん、鋼材など、多くの製品やサービスで値上げの動きが広がっている。それを受けて、今後物価上昇を見込む家計の割合も、大きく高まっている。

 海外でも、米国やユーロ圏では足元のインフレ率(4・0%、3・5%)がすでに「望ましい水準」(2%程度)を超えて上昇しているし、中国や中東など新興国では2けたに達しつつある。原油高・資源高は当面収まりそうになく、最近ではコメなど食料品価格も急騰している。中国など、かつての低コスト新興国では賃金が上昇しており、欧州などでも賃上げの動きが見られる。また米国や中東産油国では通貨の下落が輸入物価を上昇させ、インフレ率を押し上げている。さらに欧米では金融不安や景気減速に対処するための大胆な金融緩和や財政刺激策が潜在的なインフレ圧力となりかねない状況にある。

 振り返ると、90年代はグローバル競争、言い換えると低コスト新興国の成長と先進国の労働分配率の低下=賃金抑制が世界的なインフレ率の低下(ディスインフレ)をもたらした。しかし現在は新興国の経済発展、生活水準の向上が世界の資源・エネルギー需要を高め、先進国では低下しすぎた分配率の修正が始まっている。その帰結としてのインフレ率の高まりだとすれば、このトレンドは今後しばらく続くとみるべきだろう。

 食品・エネルギーを除く消費者物価やGDPデフレーターがなお下落しているのを見て、日本はまだデフレ状態にあるという論者もいる。しかし世界の趨勢(すう・せい)を見れば、ディスインフレからインフレへと時代は変わりつつあり、いずれ日本にも及ぶと考えるのが自然ではないか。(山人)

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