現在位置:asahi.com>社会>裁判> 記事

ニアミス事故、管制官に逆転有罪判決

2008年04月11日20時48分

 静岡県焼津市の上空で01年に起きた日本航空機のニアミス事故で、業務上過失傷害罪に問われ一審・東京地裁で無罪判決を受けた管制官2人に対し、東京高裁は11日、執行猶予付きの禁固刑とする逆転有罪判決を言い渡した。

図

  

 須田賢裁判長は、管制官が便名を間違えて1機を降下させた指示と、乗客57人が負傷する結果との間に因果関係があると認定。誤指示を出した蜂谷(はちたに)秀樹被告(33)に禁固1年、指導役の籾井(もみい)康子被告(39)に禁固1年6カ月を命じ、ともに3年の執行猶予を付けた。2人は上告する方針という。

 ニアミス事故で管制官個人が起訴された初めてのケース。一審判決は誤指示について「それ自体は危険性のある行為ではなく、直接事故につながったわけではない」として、2人を無罪にしていた。しかし、航空機同士の安全な間隔を保つための管制指示で危険な状況となった場合に刑法上の注意義務違反に問えるとした今回の判断は、航空業界に大きな影響を与えそうだ。

 判決によると、蜂谷管制官は958便に出すべき降下指示を誤って907便に出し、両機の間隔が管制基準よりも狭まった。その後も2人は誤指示に気づかず、空中衝突防止警報装置(TCAS)の回避指示(RA)が作動し、958便はRAの指示に従い、907便は管制官の指示に従って両機が降下したため、高度差約10メートルまで接近した。

 須田裁判長は、蜂谷管制官の誤指示が「両機を差し迫った状況で近い高度で滞留させた、実質的に危険な指示」と批判。「一時的に基準よりも間隔が狭まっただけで、危険性はなかった」とする弁護側の主張を退けた。

 その上で、衝突を回避するための急な措置で乗客が負傷するおそれがあったことを、2人は予見できたと指摘。「刑法上の注意義務に違反することは明らかだ」と述べた。

 現在では、管制官の指示とTCASが異なる指示を出した場合、TCASに従うことが国際的にも明確なルールとなっている。管制官に異常接近を知らせるシステムの不備も解消されている。(河原田慎一)

PR情報

この記事の関連情報

このページのトップに戻る