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タタもうひとつの挑戦

2008年04月11日

 1月に約28万円の超低価格小型車を発表したインドのタタ・モーターズが今度は、英国を代表する高級車ブランドのジャガーを買収すると発表した。

 ジャガーは創業1922年の名門高級車メーカー。89年に子会社化した米フォード・モーターが経営不振に陥り、07年6月から売却先を探していた。

 タタは買収により、製品の育成やブランドの熟成に必要な時間をお金で買うことができる。これでタタは乗用車では軽から高級車まで、商用車でも軽から中大型車まで幅広い製品をそろえ、多様化しながら拡大するインド市場に対応できる。

 インドの独立系民族自動車メーカーが、旧宗主国の名門高級車メーカーを買収する。これは、近年の世界自動車産業のパワーバランスの変化を象徴する事象だ。新興国で高級車の販売が伸びているだけに、新興国メーカーの発展の幅を広げるものとして注目される。

 だが、高級車ブランドの買収が新興国メーカーの発展につながる保証はない。それは96年に英ロータスを買収したマレーシアのプロトンの例で明らかだ。プロトンは乗用車用エンジンをロータスと共同開発したが、量産経験がないため、品質改善で苦労した。英国に高コストの開発陣を抱えているが、自社製品の強化に有効活用できていない。

 ジャガーもまた、高コスト構造と品質問題を抱える。フォードも実現できなかった旧宗主国の名門ブランドの再生は、タタの経営手腕にかかっている。

 先進国の名門高級車メーカーの従業員や協力部品メーカーを奮い立たせること。それがタタの新たな国際戦略であり、超低価格車投入とは違うもう一つの挑戦である。(窯)

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