「トイレにも自分では行けない状態の患者が、通院か個室(入院)かの選択を迫られて17万円を超える差額ベッド代(個室料金)を払わされた」−。神経内科のベッド削減・診療科の廃止が全国的に進む中、全国多発性硬化症友の会や全国パーキンソン病友の会など6団体で構成する「神経難病団体ネットワーク」は3月25日、舛添要一・厚生労働大臣に「神経難病患者の病床などを確保してほしい」と要望した。同ネットワークは「定期的な受診と適切な検査・治療が悪化を防ぐ。神経内科を存続・拡充してほしい」と訴えている。
同ネットワークは、運動・視力・感覚障害などを起こす多発性硬化症(MS)患者の「全国多発性硬化症友の会」▽筋肉が固くなったり、動作が遅くなったりするパーキンソン病(PD)患者の「全国パーキンソン病友の会」▽全身の運動神経が侵されて筋肉が萎縮していくALS(筋萎縮性側索硬化症)患者の「日本ALS協会」▽運動失調を主症状とするSCD(脊髄=せきずい=小脳変性症)患者らの「全国脊髄小脳変性症友の会」▽身体中の筋肉の力がなくなる、または低下する重症筋無力症患者の「全国筋無力症友の会」▽四肢の運動・感覚障害を主症状とする慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)患者らの「全国CIDPサポートグループ」−の6団体で構成している。
これらの神経難病患者らを対象にした神経内科は、不採算医療≠ニして国公立・民間を問わず各地で縮小・廃止やベッド削減などが進んでいる。
同ネットワークの調べによる具体例をみると、医大からの医師の引き揚げで神経内科が廃止され、病院が患者にクリニックを紹介(群馬)▼神経内科のベッドは5つに削減され、患者が転院を勧められている(兵庫)▼神経内科医不足から週1回の外来が月1回になった(奈良)▼トイレも自分でできないほど悪化し受診したが、ベッドの空きがないため通院か個室入院か選択させられ、1泊4万円を超える個室など差額ベッド代だけで17万円以上請求された(東京)▼今までなら回復を待って自立できるようになってからの退院だったが、まだ介護が必要な段階なのに退院を迫られている(愛知)▼40数人いた神経内科医が20数人に減って、入院患者が診(み)られなくなり外来のみになった(滋賀)−といった事例が相次いでいる。
同ネットワークの話では、神経内科の廃止やベッド削減などによって、通院の困難な患者が通院を迫られ、病状の悪化や回復の遅れを招いている◇遠くの病院への転院を余儀なくされたり、複数の病院を受診せざるを得なくなることで、患者は経済的にも肉体的にも負担が強まっている◇神経難病患者は治療薬による副作用などから複数の診療科を受診している場合が多いにもかかわらず、総合的な治療ができなくなってきている−などの深刻な影響が及んでいる。
このような事態に基づき、同ネットワークは厚労省に対して、1:神経難病患者が行き場を失う国公立病院の縮小計画の中止、2:長期入院を必要とする難病患者のための病院の確保、3:急激に悪化・再発した場合も入院治療できるベッド確保などの緊急予算措置、4:各病院の神経内科の存続・拡充の4項目を要望した。
加えて「経営困難に陥っている病院が続発する中、経営悪化を助長する診療報酬の改悪を改めることや、医師確保のために医学部の定数増などの抜本的な対策を取る」ことも指摘。「定期的な受診と適切な検査・治療が悪化を防ぐ。行き場のない難病患者がでないように、診療科やベッドを確保する」ことを求めた。
厚労省への初めての要請について、東京や宮崎から集まったメンバーは「厚労省は専門機関ながら神経難病に対する理解が及んでいないことが分かった」と指摘。そのうえで「『医療構造改革』によって4月から本格化する療養病床削減計画などに歯止めを掛けないと、患者や家族に多大な悪影響を招く。病床確保等へ今後も粘り強く要請活動を進めたい」と話した。
厚労省への要請の後、同ネットワークは国会議員への要請行動も行った。
更新:2008/03/25 17:57 キャリアブレイン
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医師の山田規畝子さんは、脳卒中に伴う高次脳機能障害により外科医としての道を絶たれました。しかし医師として[自分にしかできない仕事]も見えてきたようです。