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大阪三越伊勢丹、初年度目標550億円

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記者会見する(左から)JR西日本の山崎正夫社長、三越伊勢丹ホールディングスの武藤信一会長、石塚邦雄社長

 三越伊勢丹ホールディングス(HD)は8日、2011年春に大阪・梅田のJR大阪駅新北ビルにオープンする店舗を「ジェイアール大阪三越伊勢丹」(仮称)にすると正式発表した。傘下の三越の大阪店とする計画だったが、梅田の百貨店が今後、相次いで売り場面積を広げることなどを踏まえ、伊勢丹主導の店に切り替えて競争力を高める。

 初年度の売り上げ目標は550億円。出店に合わせJR西日本の専門店街(売り場3万平方メートル)の運営も担う。京都駅内のジェイアール京都伊勢丹を営業するJR西日本と伊勢丹の共同出資会社が運営主体となる。

京都の成功再現狙う…三越方針転換 JR西も期待

 三越伊勢丹ホールディングス(HD)が2011年のJR大阪駅新北ビルでの出店を三越単独から伊勢丹主導に変えたのは、激戦区となる大阪・梅田で競争に勝ち抜くには、ファッションに関心の高い顧客層を取り込むことが必要で、伊勢丹のブランド力が欠かせないと判断したためだ。ただ、「ジェイアール京都伊勢丹」が好調を続ける京都と比べて競争環境は格段に厳しく、“成功体験”を再現できるかは不透明だ。

◇環境変化

 「マーケティングなども含めて伊勢丹のやり方でやる」。8日の記者会見で三越伊勢丹HDの武藤信一会長はこう話し、新店に伊勢丹のノウハウを最大限に生かす考えを強調した。30〜40代の女性を主なターゲットに据えながら「(親や子供も含めた)3世代に対応できる伊勢丹の強みを生かし、西日本での旗艦店とする」と自信をみせた。

 三越が主導権を譲ったのは、阪急百貨店梅田本店などの増床計画で「環境が一変した」(三越伊勢丹HDの石塚邦雄社長)ためだ。三越には大阪撤退後から再出店までの「空白期間」が6年にも及び、そのハンディキャップも指摘されていた。

 三越伊勢丹HDの営業政策担当の役員は伊勢丹出身者が中心で、商品管理システムも10年度に伊勢丹側に一本化する。こうした伊勢丹主導の体制が整いつつあることも、大阪戦略見直しの背景にあるとみられる。

◇ノウハウ

 97年に開業したジェイアール京都伊勢丹の好調も、伊勢丹主導の決定に大きく影響した。多くの観光客らが訪れる京都駅直結の立地条件を生かして開業後、増収を続けている。京都駅ビルの成功で伊勢丹に対するJR西日本の期待感も強い。JR西は大阪駅周辺の再開発を控え、新北ビルの収益力確保は絶対条件。伊勢丹主導への転換に同意したのも「事業性が十分で、京都の店舗運営ノウハウを活用できる」(JR西の山崎正夫社長)と判断したためだ。

 京都伊勢丹を運営するジェイアール西日本伊勢丹は年内に約200億円増資し、伊勢丹側の出資比率を33%から40%まで高める。「現在の比率に伊勢丹の不満が強い」(関係者)と言われ、連結子会社からは外したくないJR側が、譲歩を迫られた格好だ。

◇競合

 大阪市内では、2011年前後に百貨店の増床や新規出店が相次ぎ、売り場面積が現在の約1・5倍になる「2011年問題」で過当競争が懸念されている。

 三越伊勢丹の戦略に対し、大丸は「ともにファッションに強い阪急、伊勢丹との競争は厳しい。大丸らしさを出せる品ぞろえが必要だ」と受け止める。阪急、阪神百貨店の持ち株会社エイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングは「厳しい競合環境は変わらない。地域一番店の地位をさらに高める」とコメントした。

新店は大いなる実験

 三越伊勢丹ホールディングス(HD)の武藤信一会長(伊勢丹社長)と石塚邦雄社長(三越社長)、JR西の山崎正夫社長の記者会見での一問一答は次の通り。

(敬称略)

 ――運営主体変更の経緯は。

 武藤 顧客の期待に応える店を作るには、三越と伊勢丹の機能、能力を全部使い切らないといけない。JR西と組めば旅客網も生かせるため、年明けにJR側に運営主体の変更を申し出た。

 ――三越の経営が苦しい中で、大阪出店を白紙撤回する考えはなかったのか。

 石塚 そういうレベルの話はしてきた。その延長にあるのが伊勢丹との経営統合だ。三越にとってもHDにとっても最良の決定だ。

 ――伊勢丹色が強い新店で三越色をどう出すか。

 武藤 店作りは伊勢丹の手法をとるが、宝飾やギフトなど三越の強みも生かす。新店は大いなる実験だ。

 ――JR大阪駅には大丸も入居している。

 山崎 大丸には最大限の配慮をして中立的立場で計画を進める。大丸との信頼関係は維持したい。

2008年4月9日  読売新聞)

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