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快眠の極意は“起床”にあり

2004年09月27日


 今や「不眠」は、日本人の5人に一人が抱えている悩みだ(ファクトシート参照)。しかし、それほど身近な問題であるにもかかわらず、睡眠にまつわる誤解は依然として多いことが指摘されている。




「8時間睡眠が理想」に根拠なし






 まず挙げられるのが、「8時間睡眠」へのこだわり。一般に、理想の睡眠時間として「1日8時間」という数字をよく聞くが、これに医学的根拠があるわけではない。実際、米国の大規模調査では、7時間睡眠の人が、8時間以上の人と比べて寿命が長いという結果があるくらいだ(グラフ参照)。




 NHKが2000年に行った国民生活時間調査によると、日本人の平均睡眠時間は7時間23分。年代別では、30代が6時間57分、40代が6時間59分と、働き盛りの年代で特に睡眠時間が短いという結果が得られた。




 しかし、平均睡眠時間はあくまでも一つの目安。必要な睡眠時間にはかなりの個人差があり、3〜4時間の睡眠で十分な人もいれば、10時間以上眠らないと体が持たない人もいる。例えば、3時間睡眠で有名なナポレオンがいる一方で、アインシュタインは1日10時間眠っていたという。




 必要な睡眠の長さには、生まれつきの体質がかかわっていることも明らかになってきている。「8時間眠らなくては健康に悪い」などと考えて、無理に寝床で長い時間を過ごすと、かえって夜中に目覚めやすくなったり、熟睡感が得られなくなったりする。睡眠時間そのものにこだわりを持たないことが、不眠対策の重要なポイントの一つだ。




 なお、睡眠が本当に足りているかどうかは、日中に眠気がなく、きちんと過ごせるかどうかを目安にする。日中の眠気がひどかったり、平日と比べて週末に3時間以上長く眠らないといられないようならば、「睡眠不足」といえる(セルフチェック参照)




眠りが浅い人は「遅寝・早起き」の勧め




 不眠対策におけるもう一つのポイントは、「早寝・早起き」ではなく、「遅寝・早起き」への発想の転換にある。




 不眠に悩む人は、少しでも眠ろうと早くから床に入ろうとする傾向があるが、これはかえって逆効果。最近の研究では、普段の入眠時刻の2〜4時間前は、1日の中で最も寝つきにくい時間帯であることが明らかになっている。せっかく早く床に入っても、なかなか寝つけず、よけい「眠れない」と不安になってしまう。したがって、「眠たくなってから床に就く」ことが、スムーズに眠りに入るための近道だ。




 また、就床時間よりも重要なのが、「定時に起きる」こと。起床後、太陽の光を浴びると、体内時計のリズムがリセットされ、その約15〜16時間後に眠気が出現することが分かってきたからだ。これは、睡眠調節に関与するホルモンであるメラトニンの分泌リズムによる。つまり、起きた時点で、寝つく時間はほぼ決まってしまうというわけだ。




 平日の睡眠不足を補うために、週末に少しでも睡眠時間を稼ごうと昼近くまで寝ていると、その晩はさらに寝つきが遅くなり、月曜日の朝起きるのが辛くなる。どうしても平日の睡眠不足を休日に解消したい人は、休日も頑張って一度早めに起きて日光を浴び、その後午後3時くらいまでゆっくり過ごす方法が勧められる。




 ただし、長時間の昼寝はかえって生活のリズムを崩し、夜の睡眠に悪い影響を与えることがあるので要注意。厚生労働省の「睡眠障害の診断・治療ガイドライン」では、昼寝をするなら15時前とし、20〜30分以内にとどめるよう推奨している。




 なお、日本人は睡眠薬代わりに酒を飲む人が少なくない(ファクトシート参照)が、寝酒は勧められない。一時的には寝つきが良くなっても、アルコールが分解された後は眠りが浅くなり、途中で目が覚めたりするからだ。また、睡眠時無呼吸症候群を悪化させる要因ともなる(ピックアップ2参照)。睡眠薬代わりの寝酒では、通常の飲酒と比べて飲む量が急速に増えやすいのも問題だ。お酒は、晩酌など、適量のお酒を飲んでくつろぐ程度を心がけたい。




(瀬川 博子=日経メディカル




〔参考文献〕

1)日経メディカル 2002 (7); 416 : 40-51.

2)内山真編 : 睡眠障害の対応と治療ガイドライン ; じほう 2002.


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