社説
桐朋学園支援/市民への浸透に力入れよ
2008年04月07日
富山市は平成二十一年度から、桐朋学園富山キャンパス(富山市呉羽町)にある桐朋学園大学院大学とオーケストラ・アカデミーへの補助金を減額する。厳しい財政状況に考慮し、十一年度以降最も少なかった年度より約三千万円減らし、年間二億円にする。支援を縮小したといっても小さな額ではない。市民が納得できるようキャンパスから発信する文化を広く浸透させる活動に力を入れてほしい。
市と学園は九年、大学院大学に対して十一年度から二十年度までの十年間で計五億五千万円を支出する契約(債務負担行為)を交わし、七千五百万円−五千万円に分割して毎年、助成してきた。これとは別にアカデミーには毎年二億円強−一億数千万円を助成。これらを合わせ十一年度から年間二億九千五百万円−二億三千四十五万円を支出してきた。
債務負担行為が二十年度で満了するため、市は二十一年度以降の支援の在り方を検討してきた。二十年度予算で投資的経費を7・9パーセント抑えるという厳しい財政の現状を前に、縮小しながらも継続する方針を選んだ。市と学園側は三月末に協議会を開き、合意に至った。
二十一年度以降の具体的な支援内容は、大学院大学とアカデミーの補助金を一本化して年間二億円とし、五年後に見直すとの条項を設けた。市の財政を縛ることになる債務負担行為は設定しなかった。補助対象も限定し、演奏家の育成や教育研究、教員の確保にかかる経費に絞る。
さまざまな議論がある中で誘致した桐朋学園富山キャンパスだが、人材は育ってきている。アカデミーの修了生三百二十人のうち、二十三人が東京フィルハーモニー交響楽団やオーケストラ・アンサンブル金沢などプロのオーケストラに入団。富山で育った演奏家が第一線の舞台に立ち始めた。
一般向けの活動では、アカデミーの定期演奏会には延べ四万四千人が足を運んだ。幼稚園・保育所での出向音楽教室も百四十二回に上る。大学院大学でも教員や学生がコンサートを開いており、市民に対して質の高い音楽が楽しめる機会を提供している。
市は昨秋、市民や教育・芸術関係者三百三十八人(回答率30パーセント)にアンケートを実施した。84パーセントがキャンパスの存在を認知していたが、若手音楽家の応援団的な存在である「友の会」は34パーセント、高校生以下は定期演奏会が無料になるという制度は12パーセントしか知られておらず、PR不足が浮き彫りになった。さらに16パーセントは「市が補助する理由はない」と答えている。
芸術や文化に費用対効果を求めることは難しいが、年間二億円は相当な額だ。学園がキャンパスの運営費として支出する一億三千万円よりも上回っている。五年後の見直しまでに市の支出累計は十億円になる。
七年九月のアカデミーの開学以来、十二年が経つ。減額しつつも継続するという方針を打ち出したのを機に、演奏会や音楽教室の在り方をあらためて見直し、新たなイベントを開始するなどキャンパスが身近に感じられる方策を考えることが必要だろう。
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