日報抄
取るに足りないことだ。いや、これは重大事ではないか−。毎朝、おしっこをしながら、気になってしかたがないことがある。松下電工のアンケートに、男性の四割が座って小便をすると答えた。その比率は一九九九年に比べ三倍になっているという
▼男女、大小両用で使える洋式便器の普及により、新築住宅では男性用のアサガオ型が絶滅寸前だ。でもなぜ男性がおしっこで座るのか。「女性が便器外の飛びはね汚れを嫌い、座ってするように頼んでいるのでは」とメーカーはみる。座る楽より掃除の都合。家庭内の力関係も反映しているようだ
▼新潟市でトイレ博物館展(八日まで・TOTO新潟営業所)があると聞き、のぞいた。水戸黄門は杉の葉を敷いた熨斗(のし)の形をした木箱を使った。大きく頑丈な洋式便器は力士用だ
▼アサガオ型を伸ばしたような微妙な形をした便器が目に入る。女性用の立ち小便器だった。五一年から七一年まで生産され、東京五輪では国立競技場にも設置された。でも、便利といわれても、恥ずかしさが勝って普及しなかった
▼時は流れ昨年十一月、韓国で世界トイレ協会が発足し、地球の衛生環境向上を訴えた。その記念展ではファッショナブルな女性用の立ち小便器が再登場し注目を集めた
▼性別だけでなく体調や考え方も人それぞれ。指示をされずに自由にしたいことはある。この春も君が代斉唱をめぐり、起立しない教員が処分を受けている。立つか、座るか。強制によらず、自ら決めることができたら、どんなに爽快(そうかい)だろう。
[新潟日報4月7日(月)]